東京総合車両センター公開 その3 首都圏直流電車の主電動機 part2 MT46
前回は吊り掛け式モーターの話題でしたが、今回からは新性能電車に搭載された電動機の話題です。
101系など新性能電車第一期車両に搭載されたMT46電動機
お茶の水に接近する中央快速101系 1978/3
1957年登場の101系から始まる新性能電車用に東洋電機製造が原設計を担当し、試作車に搭載した直流直巻整流子電動機がMT46形、量産車からはMT46A形となりました。
1時間定格 連続定格
出力 kW 100 85
電圧 V 375 375
電流 A 300 255
回転数rpm 全界磁 1860 2000
弱め界磁 3180 3600
旧形電車に用いられたMT40形に較べ高回転化することで、大幅な小型軽量化に成功し、重量は660kgで1/3に、端子電圧も並列接続時に4個直列となるので、375Vに下げられました。発電ブレーキ使用時には電圧が定格の2倍程度まで上昇するため低電圧化は必要でした。駆動方式は中空軸平行カルダン駆動方式となりました。
主制御器も新開発のCS12(試作)、CS12A(量産)となりました。2両分8個の主電動機を制御する多段式電動カム軸制御器で
制御電圧 DC100V
制御空気圧力 5.0kg/cm2
制御段数 力行 直列全界磁 13段
並列全界磁 11段
並列弱め界磁 4段
ブレーキ 直列 13段
並列 11段
旧形に比較すると段数が増えて、電流変化が減り、運転が円滑になり、発電ブレーキの追加で制輪子の摩耗も減少しました。CS12形制御器はその後、1991年製の415系1500番台最終増備車まで長きに渡って製造されました。
101系試作車は全電動車方式で構成され、混雑度に応じて限流値を変化させ、3.2km/h/sと一定の加減速度が保てる応荷重弁機構が採用されていました。
限流値 空車時 350A 満車時 480A
架線温度の上昇や変電所容量 (10両全電動車でピーク時5600A) の問題があり、試作車営業運転からこの装置の使用は中止となり、乗車状態にかかわらず、限流値ハ280A、ピーク電流は編成あたり、3650Aと固定されました。
全電動車編成でありながら、100%乗車時の起動加速度は2.2km/h/sであり、旧形車6M4Tの100%乗車時の2.0km/h/sと大して変わらないこと、製造コストの高い全電動車方式から中間に付随車を入れ、8M2Tから6M4TへとMT比が下げられて行くことになりました。最終的に6M4Tが限界という結論に達し、中央快速線の場合、限流値は380A固定となりました。山手線は350Aになりました。
101系における全電動車方式が困難になった頃、新たな方式の通勤電車開発のために、1960年、電力回生ブレーキ付きの試作ユニット クモハ101-クモハ100 910番台が1組試作されました。まだ大容量半導体技術が未熟で磁気増幅器による回生方式だったため、制御機器の重量増、保守困難、回生失効が問題となり、導入は見送られましたが、このときに搭載されたモーターがMT50形でした。1964年には電装解除され、クハに改番され、1979年に廃車となりました。
特急形電車では1958年登場の151系がMT46A、1961年度以降の増備車は脈流対策済みのMT46Bとなりました。歯車比は3.50 (22:77)、弱め界磁率は35%でした。
151系時代の1962年6月のダイヤ改正で特急「つばめ」1往復が広島まで延伸されましたが、MT比1:1の編成では瀬野八越えが出力不足となるため、上り列車の広島~八本松間ではEF61が補機として連結されました。
1962年登場の161系では20‰の勾配が続く山岳線の上越線を走破するために157系と同様の歯車比 4.21(19:80) が採用され、主制御器も抑速ブレーキ装備のCS12Cとなりました。
東海道新幹線開業後の転用では151系と161系を共通化するため主電動機をMT46AもしくはMT46BからMT54 (120kW)に換装し、歯車比は3.50、弱め界磁率は40%に統一し、181系化する改造が行われました。制御器もノッチ戻し制御が可能で抑速ブレーキ付きのCS15Bになりました。
出力増強により、10‰勾配における均衡速度は120km/hに上がり、481系と同様になったため、山陽特急では補機連結が無くなりました。
この際に151系から降ろされたMT46A電動機の一部がその時点でまだ製造されていた101系に流用されました。
既に181系化されたものですが、帯無し、長スカートと上部ライト付きと151系時代の面影を残すクハ181-5 1972/7 岡山
急行形電車では同じく1958年登場の153系、修学旅行用電車の155系、159系、特別準急電車の157系、交直両用の451系がMT46AもしくはMT46B(451系)で登場しています。153系も最盛期の東海道本線急行 (MT比1:1編成) が広島まで乗り入れる際には上り列車にEF61形電気機関車+オヤ35形控車の補機が連結されました。
これらの系列において歯車比は全て 4.21で共通です。
保土ヶ谷付近を行く153系 1981/1/3
近郊形電車では1960年登場の交直両用の401系、421系ではMT46BとCS12Bで制御する方式で登場し、1963年、111系がMT46A搭載で登場しました。しかし、ほぼ同じ時期に強力型モーターMT54が開発されため、403,423, 113系へ移行しMT46系搭載形式は短期間の製造に留まりました。
これらの系列の歯車比は 4.82 (17:82)です。
常磐線 401系 低運転台クハ先頭の4連 上野
奥の車両がデハ205 2014/10/18 高崎
これら以外に101系からの改造、主電動機などを流用した系列として、123系、クモヤ145形、クモル145形、クモユニ147形などがあります(関連記事123系、145系)。JR東海の123系7両は、2001年にモーターがMT54に換装されました。
上信 デハ1201 2006/8/26 高崎
私鉄では小田急3000系(初代) SE車が東洋電機製造 TDK806/1-Aを搭載しており、規格性能は国鉄MT46Aと同じかと思います。上信電鉄のデハ200形も東洋電機製造 TDK806/4-Dを搭載しています。同社の1000系も改良型のTDK806/6-Gを搭載しており、出力は100kWです。同じタイプのモーターは静岡鉄道1000形にも搭載されています。こうして調べて行くと鉄道友の会 福井支部報 わだち No132に興味深い記事がありました。TDK806シリーズが国鉄では101系に私鉄では上記以外に伊豆急100形 (806/2-B)、京王井の頭線3000形初期車 (806/3-C)に搭載されていたことが分かりました。
今回の展示では101系さよなら運転時のHMも展示されていました。
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