1981/11 北陸へ 2 EF81 その1 1号機から38号機誕生まで
今回のシリーズではかつて北陸本線のヌシと言われた異色の6軸交流機EF70の晩年の姿を紹介しました。湖西線ルートの開通による交直両用機のロングラン、国鉄財政悪化による改造案の立ち消え、軸重と過大出力による新天地九州での働き場のなさが彼らの晩年をあのようにしたことになりますが、同じ交流専用機のED75が2000年代に入ってからも後輩EH500の台頭を尻目に先のダイヤ改正で運用を失うまで働き続けられたのとは誠に対照的でした。
東北のED75がEF81に取って代わられずに頑張れたのは、東北本線、常磐線の線区の長さ、東北本線の急勾配はEF81単独の出力ではED75重連を凌駕出来ないことによるのではないかと思います。
さて今回は日本海縦貫線のヌシとして1968年に登場し、今日も後輩EF510の台頭もなんのその、改番までしながら頑張っているEF81を取り上げたく思います。といってもJRになってからの写真は膨大なものがありますので、まずは国鉄時代、JR西日本のブルートレインを銀塩で撮ったものから紹介してゆこうと思います。ただロット毎の紹介になる場合にJRでの写真を使うこともあります。
EF81を開発することになった背景は、1969年10月の北陸本線・信越本線(糸魚川~宮内間)電化開業です。同区間には糸魚川~梶屋敷にデッドセクションが設けられ、糸魚川側は交流60Hz20kV、直江津側は直流1500Vに電化され両区間を直通できる交直両用機関車が必要となりました。
その案として
①チョッパ方式によるD形(B-2-B)機関車
②EF80,EF30を踏襲した一台車一モーター方式のF形機関車
③MT52搭載の各軸駆動方式のF形機関車の3案が候補になったそうですが、
①案は当時技術的にも画期的なものであるが、コストがかさみ、試作、量産の過程を取った場合、時間的な猶予が殆どないことから見送られました。②案はEF80の流用が考えられましたが、EF80を日本海側の豪雪地帯で使用するのは耐寒耐雪の観点から無理があること、さらに10パーミル勾配で1200tの引き出しを条件に取った場合EF80のモーターでは無理があることなどから大幅な設計変更を迫られることで見送られ、結局③案で行くことになり、直流機のスタンダードEF65をベースにしたEF81が1968年に誕生しました。当時、日本海縦貫線の村上以北は交流50Hz、20kVでの電化が計画されていたのでEF81は我が国初の3電源方式対応の交直両用機関車となりました。
EF81の概要は
①基本性能は10パーミルの勾配線区で1200t(最大1300t)の列車を牽引可能なこと
②最高許容速度(主電動機の回転速度から許容される速度)は115km/hとし、客車列車の加速余力を持たせること
③標準型主電動機MT52Aを使用するF形機としたこと
④軸重を制限内(16.8t)に収めるため、機器のコンパクト化をはかったこと
⑤耐寒耐雪を強化し、特高圧機器は機械室内に納め、パンタグラフは空気上昇、バネ下降式にしたこと
⑥固定編成特急客車および高速貨物牽引用の装備を持つこと
⑦直流区間の列車暖房電源としてサイリスタ・インバータを採用したこと
などです。
EF81 1号機 1981/11/25 富山駅での撮影です。 1号機登場時の写真では顔の真ん中付近にタイフォンが付いていますがこの頃は改造されていました。同機は2004年3月に廃車されました。
1号機は昭和42年度第3次債務で先行試作車として製造されました。1968年12月に落成し、富山第二機関区に配置されました。901号機とならずに1号機となっているのはEF65と同じですね。
長岡駅に12系臨時急行?を牽引して入線するEF8110号機 1975/10 まだ初々しいローズピンクの姿が新幹線工事中のまだ明るかった長岡駅の光線に映えたといった感じでしょうか。
金沢駅?で入れ換え中の19号機
2号機から28号機までは昭和43年度第4次債務で製造されました。名目は北陸本線糸魚川~直江津間電化開業、信越本線直江津~宮内間の電化開業用で1969年5月から9月にかけて落成しました。全機が富山第二機関区に配備されました。
試作1号機の結果を考慮して、バーニア制御器がCS36Aに、主抵抗器がMR102Aに、転換・界磁制御器がCS37Aに主整流器がRS36Aに(1号機ではそれぞれAが付いていない)に改められました。1号機では各種粘着方式を比較するため抵抗バーニア制御器内に空転試験スイッチを設けて、①再粘着ブレーキ・ノッチ止め②再粘着ブレーキ・ノッチ戻し③ノッチ戻しの3種類の制御を行えるようになっていましたが、このロットから①が採用されたためスイッチは廃止されました。
このロットのうち、11号機から18号機は1985年、EF80淘汰のため田端機関区に転属し、塗装も赤2号を纏って首都圏で活躍しました。
富山駅に入線する35号機牽引のコンテナ貨物列車、後部には車載貨車クの姿も見えます。
29号機から38号機は昭和43年度第5次債務で製造され、名目は1969年10月改正の日本海縦貫線貨物列車増発用でした。1969年9月から10月にかけて落成し、前ロットと同じく全機が富山第二機関区に配備されました。
39号機以降は昭和46年度予算になります。今回はここまでにします。
テキストはイカロス出版発行 国鉄新性能電機の軌跡 交直流電機機関車EF81の内容を参考に纏めています。
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