1976/1 福島へ 3 赤い交流電気機関車たち 2 ED75 その1
東北の交流電気機関車、2両目はED75形です。今回は0番台と高速牽引用の1000番台について触れます。700番台は別途、奥羽北線の関連で記述します。
直流機のEF65、交直両用機のEF81と並んで交流機50Hzのスタンダード機と呼ばれる機関車がED75です。そもそもは1963年に常磐線が平駅(現・いわき駅)まで交流電化開業するのに伴い、それまでのED71形の後継機種として、広汎な運用に供するため汎用性を重視して設計された機関車です。
投入開始以来、当初構想の東北・常磐地区のほか、北海道や九州にも投入され、事実上の標準型として1976年までに総数302両が製造されました。
特急列車から一般貨物列車まで幅広く運用されましたが、1980年代以降はEF81形の運用拡大、夜行客車列車や貨物列車の削減、普通客車列車の電車化・気動車化などによって運用が減少し、JR移行時には初期車を中心に大量の廃車が発生しました。その直後、廃車となった一部の車両が日本貨物鉄道(JR貨物)の輸送量増大に対応するため車籍を復活して運用に就いたが、その後はEH500形の増備によって淘汰が進み、2012年春のダイヤ改正ではJR貨物の車輌は定期仕業がなくなりました。
<メカニズム>
シリコン整流器を搭載した交流電気機関車としてはED74形がありますが、ED75形は以下のような変更がなされました。
ED74形は整流変圧器の1次側に置いた単巻変圧器で巻線比を切替える高圧タップ制御でしたが、電流を連続的に制御できないシリコン整流器の問題点を解決できませんでした。そのため、従来の水銀整流器搭載機と同等の粘着力をいかに確保するかが技術的課題として残されました。
そこで変圧器の2次側で巻線比を切替える低圧タップ制御とすれば、起動時に先天的に定電圧特性が働き、理論上この問題は解決できます。低圧側の制御は高圧側に比べ大電流を扱うため電流ピークが発生しやすいですが、磁気増幅器により流通角制御するタップ間連続電圧制御で連続制御が可能となり、電気的粘着力の問題は解決しました。その他の制御方式の電気機関車と区別するため、磁気増幅器(magnetic amplifier マグネティック アンプリファイアー)の略称からED75はM形と呼ばれています。磁気増幅器は重量が大きいため、将来サイリスタインバータが実用化された際に換装が可能な設計とされました。主電動機は国鉄新形電気機関車の標準形式である直流直巻電動機MT52形を4基搭載しました。
台車はED74形と同様、引張棒で牽引力を伝達する(ジャックマン式)仮想心皿方式を採用し、力点をレール面まで下げ機械的な粘着力を確保しています。1エンド側にDT129Aを、2エンド側にDT129Bを装着しました。
各所に20‰超の勾配区間が散在しながら、1,200t 牽引が要求される東北本線で使用するため、重連総括制御が可能な設計とされ、前面に貫通扉を持ち、車体構造も、1号機以外は、外板を別組して後から台枠と接合する方式を採用したため、車体の裾が一段引っ込んだ形態となっています。運転台側窓前部や側面明かり取り窓のHゴム支持化、側面エアフィルターのプレス成形品採用などで構造の簡易化・軽量化を図っています。外部塗色は交流機関車標準の赤2号です。
列車暖房装置は電気暖房方式を採用し、車体側面に暖房電源動作確認のための表示灯を設置する。パンタグラフは電気機関車としてバネ上昇式(PS101)を初めて採用しました。
<番台区分>
1 - 49号機 東北本線・常磐線用として1963年から製造されました。昭和38年度本予算で製造された1・2号機は試作機で、1号機は車体構造のほか、タップ切替器の駆動方式や機器配置も量産機と異なります。1964年製造の3号機以降が量産機で、2号機の仕様を基に各機器を改良しています。番号と予算、用途の関係は
ED75 1・2 昭和38年度本予算 常磐線水戸-平電化先行試作
ED75 3~27 昭和38年度第一次債務 常磐線水戸-平電化用
ED75 28~32 昭和39年度第2次民有車両 東北本線黒磯-仙台貨物列車増発用
ED75 33~39 昭和39年度第1次債務 東北本線仙台-盛岡電化用
ED75 40~46 昭和39年度第3次債務 東北本線仙台-盛岡電化,既電化線区輸送力増強用
ED75 47~49 昭和40年度第1次民有 東北本線仙台-盛岡電化,既電化線区輸送力増強用
スカートは裾を丸めた形状でありましたが、1987年2月までに全機が廃車となりJRには引き継がれていません。
私は1~49号機は結局、逢えず仕舞いで終わりました。
50 - 100号機 東北本線盛岡駅電化に際し1965年から製造されました。耐寒耐雪装備を強化し、正面窓には保護柵とツララ切りが設けられ、外観の印象が一変しています。黒磯駅構内で発生しうる直流電化区間誤進入時の機器保護のため、主回路にヒューズを設けました。 1966年製造の85号機以降は、暖房器強化・床下のリアクトル冷却風循環化など、耐寒・耐雪性能の改善が図られている。外観では、後部標識板の廃止に伴い、尾灯に飾りリングが付きました。
番号と予算、用途の関係は
ED75 50~68 昭和40年度第2次民有 東北本線仙台-盛岡有煙旅客列車置換,貨物列車一部無煙化用
ED75 69~83 昭和40年度第1次債務 東北本線仙台-盛岡完全無煙化用
ED75 84~99 昭和40年度第2次債務 東北本線仙台-盛岡完全無煙化用
ED75 100 昭和41年度本予算 東北本線仙台-盛岡完全無煙化用
とのことです。この情報はKano鉄道局さまのサイトの情報を参考に致しました。
JRに引き継がれたのは復活機を含めてこのグループ以降となります。
昭和40年度第2次民有予算で製造された中の1両 65号機です。1975年8月 北海道旅行の帰りに青森駅で撮影した東北本線の普通列車を牽引する姿です。
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ED75 65 データ
ED7565 三菱重工業三原工場=1400/830= 三菱電機 1966-02-16 E67.2tBB(1067)
車歴;1966-02-16 製造→ 納入;国鉄;ED7565→1966-02-16 配属[達209];東北支社→
1966-02-16 到着配置;仙台→1968-09-20 長町→1980-10-08 福島→1984-02-02 長町→
1987-02-06 廃車;長町
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郡山駅で機関車交換でしょうか単機で滞泊する76号機 1976/1/2
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ED75 76 データ
ED7576 日立製作所水戸工場=193961-1 1966-06-10 E67.2tBB(1067)
車歴;1966-06-10 製造→ 納入;国鉄;ED7576→1966-06-13 配属;東北支社→
1966-06-10 到着配置;仙台→1968-09-20 長町→1974-10-15 借入;福島→
1974-10-18 返却→1974-11-03 借入;福島→1974-11-18 返却→
1975-12-29 借入;福島→1976-01-06 返却→1977-08-11 借入;福島→
1977-08-22 返却→1987-02-06 廃車;長町→
1989-03-31 車籍復活;JR 貨物;ED7576;長町機関区(盛岡?)→
1995-04-01 現在;盛岡機関区→1999-04-01 長町機関区→
1999-04-01 改称;仙台機関区→2000-08-02 移転;仙台総合鉄道部→
2002-02-18 廃車;仙台總合鉄道部
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震災前はこうして水戸駅でED75が滞泊する姿を見ることが出来ました。85号機 2006/2/8
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ED75 85
データED7585 日立製作所水戸工場=193971-2 1966-07-02(6/30?) E67.2tBB(1067)
車歴;1966-07-02(6/30?)製造→ 納入;国鉄;ED7585→ 配属;東北支社→
1966-07-02 配置;仙台→1966-07-04 到着→1968-09-20 長町→
1974-06-21 借入;福島→1974-07-02 返却→1974-07-24 借入;福島→
1974-08-03 返却→1974-10-06 借入;福島→1974-10-25 返却→
1978-04-06 借入;福島→1978-05-11 返却→1978-05-20 借入;福島→
1978-05-23 返却→1987-02-07 廃車;長町→
1988-08-26 車籍復活;JR 貨物;ED7585;長町機関区(盛岡?)→
1995-04-01 現在;盛岡機関区→1999-04-01 長町機関区→1999-04-01 改称;仙台機関区→
2000-08-02 移転;仙台総合鉄道部→2007-09-19 廃車;仙台総合鉄道部
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白坂駅を通過する90号機重連先頭のコンテナ貨物 2004/8/21
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ED75 90 データ
ED7590 日立製作所水戸工場=193981-3 1966-08-27 E67.2tBB(1067)
車歴;1966-08-27 製造→ 納入;国鉄;ED7590→1966-08-27 配属;東北支社→
1966-08-30 到着配置;仙台→1968-09-20 長町→1974-09-03 借入;福島→
1974-09-13 返却→1975-02-15 借入;青森→1975-02-21 返却→
1987-04-01JR 貨物;ED7590;長町機関区→1999-04-01 改称;仙台機関区→
2000-08-02 移転;仙台総合鉄道部→2008-03-14 廃車;仙台総合鉄道部
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先日の485系特急「はつかり」と同じときに郡山に到着する98号機牽引旅客列車 今なら701系の運用でしょう。1976/1/2
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ED75 98 データ
ED7598 三菱重工業三原工場=1421/845= 三菱電機 1966-09-07 E67.2tBB(1067)
車歴;1966-09-07 製造→ 納入;国鉄;ED7598→ 配属;東北支社→
1966-09-07 到着配置;仙台→1968-09-20 長町→1970-05-09 借入;福島→
1970-05-13 返却→1973-12-21 借入;福島→1973-12-24 返却→
1987-04-01JR 貨物;ED7598;長町機関区→1999-04-01 改称;仙台機関区→
2000-08-02 移転;仙台総合鉄道部→2006-11-30 廃車;仙台総合鉄道部
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このグループのラストナンバーでかつ昭和41年度本予算で只一両製造された100号機 2006/7/14
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ED75 100 データ
ED75100 日立製作所水戸工場=194051-1 1967-02-10 E67.2tBB(1067)
車歴;1967-02-10 製造→ 納入;国鉄;ED75100→1967-02-10 配属;東北支社→
1967-02-13 到着配置;仙台→1968-09-20 長町→1974-08-03 借入;福島→
1974-08-30 返却→1977-08-13 借入;福島→1977-08-23 返却→
1987-04-01JR 貨物;ED75100;長町機関区→1999-04-01 改称;仙台機関区→
2000-08-02 移転;仙台総合鉄道部→2007-09-19 廃車;仙台総合鉄道部(現車194053-1)
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私のED75写真も大半は2001年以降のデジカメ時代の写真となりますが、85号機以降が比較的長く生き残ったのは今回の記事で理解できました。
いつものようにテキストはWikipediaの記事を参考に纏めております。機関車個別のデータは沖田祐作 国鉄機関車表を利用しました。
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