西ベルリンの思い出 Air Berlin N67AB
久しぶりに「西ベルリンの思い出」シリーズです。
今回からはAir Berlin (IATA code: AB, ICAO code: BER)に触れようと思います。
N67AB cn 23496 ln 1217 Boeing 737-3Y0 1989/4/8 TXL
当時としては同社にとって唯一の保有機だったBoeing 737-300
Pan AmやTWAの場合はアメリカ合衆国において1978年の航空自由化の前に国際線運航の権利を与えられた航空会社がヨーロッパにハブを持ってヨーロッパ域内で営業する形で、アメリカ国籍機の西ベルリンおよび空の回廊運航権を利用しての就航でした。Air Berlinの場合は航空自由化を機に西ベルリン就航を目的として、米国・オレゴンに会社を創業したものです。
まずはその歴史から見てみましょう。
1978年 オレゴンの農業系資本Lelcoの一部門が西ベルリンから地中海方面へのチャーター便を運行する会社としてAir Berlin USA Inc.を創業 テーゲル空港にオフィスを構え、Leonard Lundgren が代表に就任しました。
1979年 免許取得後、TWAから2機のBoeing 707を譲り受け、同年4月28日、西ベルリンからパルマ・デ・マヨルカへ初便就航
1980年 Air Floridaより2機のBoeing 737-200をリース
1982年 Boeing 707はリタイア
1980年代中期は1機のBoeing 737-200もしくは1986年からはBoeing 737-300を運航(このBoeing 737-300がN67ABです)。
1990年1991年には2機のBoeing 737-400がフリートに加わる。
N67AB
1989年11月9日にベルリンの壁崩壊、1990年10月3日には東西ドイツが再統一という1980年代には予想も出来なかった事態となり、ベルリンを取り巻く航空事情も大きく変わることとなりました。
ドイツの航空会社がベルリンに乗り入れることが可能となり、1991年に会社と従業員90名はかつてLTU Internationalの営業部長だったJoachim Hunoldの手に渡り、Air Berlin GmbH & Co. Luftverkehrs KGとなりました。資本もドイツに移されました。
1997年はそれまでのチャーター便専門の会社から定期便を運航する会社となり、IATAにも加入、1999年までにBoeing 737-800を10機導入しました。
2001年11月 ウイングレットを装着したBoeing 737-800型(D-ABBC)のボーイング社からデリバリーフライトでシアトルからベルリンまでの8345kmをノンストップで9時間10分で飛ぶという記録を樹立しました。
2002年にはツアー旅行の目的地から、ロンドン、バルセロナ、ミラノ、ウイーンへの低運賃フライト路線(City Shuttle)が加わりました。
さらにドイツ内の拠点もベルリンに限らず、6つの空港(ドルトムント、デュッセルドルフ、ハンブルク、ミュンスター・オスナブルック、ニュルンベルク、パーダーボルン・リップシュタット)も拠点としました。
ただし、Air Berlinの運賃設定はヨーロッパのLCC(Buzz, Hapag-Lloyd Express, Ryanair,Virgin Express)に較べると少し高めに設定されているようです。
LCCとの違いは以下のようなサービスにあるようです。
座席指定制
機内誌の提供
機内での新聞のサービス
機内ドリンク、機内食の提供
機内エンターテイメント(テレビ、スカイマップ等)の提供
ハブ空港での乗り継ぎ保証
マイレージシステム
就航空港はLCCが利用する中小空港ではなく、大空港であること
2004年にはオーストリアの格安航空会社ニキ航空(ニキ・ラウダが2000年11月ラウダ航空を手放した後に再参入するために設立した会社)の株式24%を取得、後に49%まで増資、さらに2011年には100%出資に
2005年にはGermaniaとの提携、後年Germaniaの子会社化はされませんでした。
2006年 ミュンヘンの格安航空会社dba(旧Deutsche BA)を完全子会社化、同年60機のBoeing 737-800の発注と15機のBoeing 737-700機の発注。
2007年3月 LTU国際航空を買収、これによってA321, A330がフリートに加わりました。
2007年7月7日 Boeing 787-8 Dreamliner 25機の発注を発表
2007年8月21日 スイスのチャーター航空会社Belairの株式49%を取得
2008年9月 TUIfly(ハノーファーを拠点とするLCCで2007年Hapag Lioyd FlugとHapag Lioyd Expressの合併で誕生した現在、ドイツ第三位の航空会社)との業務提携
2009年1月 中国の海南航空(中国第四位の航空)と提携
2009年3月末 TUITravelとの戦略的業務提携でTUIflyの持っていた全ドイツ国内路線とイタリア、クロアチア、オーストリア路線を手中に、さらにBoeing 737-700フリートも
2009年9月28日 トルコのLCCペガサス航空とも業務提携
2009年10月 タイのバンコク航空とも業務提携
2010年4月 ロシアのS7航空とも業務提携
2010年7月 One World Allianceに加盟することを発表
2011年6月15日 British Airways とのコードシェア契約を締結し、ヨーロッパ域内40都市以上でコードシェアフライトを飛ばすことに
2011年9月1日 CEOのJoachim Hunoldが退任、ドイツ鉄道の前CEOのHartmut Mehdornが後を継ぎ、2013年1月からは Wolfgang Prock-Schauer がCEOに。
2011年9月 イタリアのMeridiana Flyとも提携
2011年12月 アラブのEtihad Airwaysに増資、この契約で世界の77カ国、239都市へのフライト
2012年3月20日 One Worldに正規メンバーとして加入、80カ国、800都市へのフライト
その後も積極的な経営戦略でドイツ第二位、ヨーロッパ第七位(旅客輸送実績で)、従業員数9284名の航空会社となっています。
正直言って、日本でこのAir BerlinのSuccess Storyを知っている方はあまり多くはないのではと思います。少なくとも日本のマスコミがこの話題を取り上げたことはないのではと思います。1988年頃は一機のBoeng 737-300で西ベルリンからチャーター便を飛ばしていた航空会社の歴史を見返してみてその発展ぶりに驚いている次第です。
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