1989年のDüsseldorf Airport その5 LTU Tristar 2
1989年のDüsseldorf Airportで撮影した旅客機のシリーズ、今回はTristarの開発の歴史に触れようと思います。
D-AERT cn 193J-1183 L1011-385-3 Tristar 500 1989/5/4 DUS
角度から判別はしにくいですが、胴体の短い500型のトライスター
ロッキードL-1011 TristarはBoeing 747, McDonnell Douglas DC-10についで3機目のワイドボディ民間ジェット旅客機です。ロールスロイス製のRB211エンジン3機を装備した3発機で2機は主翼下に、1機はSダクトを介して胴体尾部に搭載されています。
ロッキード社は1964年当時、Boeing 747の開発ストーリーで必ず話題となるアメリカ空軍のC-5Aギャラクシーの開発競争では勝利するものの、営業成績は決して良くなく、さらに旅客機として開発していたターボプロップ機L-188 エレクトラの開発も採算見込みが立たない144機しか販売で製造終了となり、旅客機製造会社としてはBoeingやDouglasに大きく水をあけられた状態でした。
D-AERV cn 193Y-1195 L1011-385-3 Tristar 500 1989/5/4 DUS
こういった通常の塗装パターンとは違う機体もいました
当時の状況において,新たに旅客機市場に打って出るに当り、社運をかけて当時最新の技術を盛り込んだ旅客機をつくる意気込みで提案したのがCL-1011で1966年2月の当初案では双発機でした。
一方、アメリカン航空は同年3月25日、アドバンスト・ジャンボ・ツイン中距離旅客機として新しい双発大型旅客機の開発要求を出しました。ロッキード社はアメリカのみならず、ヨーロッパでも需要があると考え、エンジンは当時、燃料消費率が優れていたロールスロイスRB211を採用し、洋上飛行やロッキー山脈越えを考慮して,双発から三発機に変更しました。
1967年9月にアメリカン航空、ユナイテッド航空、イースタン航空、トランス・ワールド航空、ナショナル航空などの大手航空会社からの受注を見込んでローンチがアナウンスされました。この時点ではライバルMcGonnell Douglas DC-10は基本設計は未完了でDC-10の開発計画が発表されたのは11月でした。アメリカン航空はトライスターを発注せずDC-10を50機発注すると発表しましたが、イースタン航空が50機、トランス・ワールド航空から44機、エア・ホールディングスから50機の受注し、一挙に受注機数は100機を超えました。さらにデルタ航空から24機を受注するに至り、1968年4月3日、ローンチ(生産プログラム開始)を発表、DC-10より先に製造が開始されました。
開発途中でRB211エンジンの再設計、さらにはロールスロイスの倒産でRB211エンジンの生産の継続が怪しくなる事態にも発展しましたがアメリカ政府が補償する交渉までなされ、なんとかDC-10に遅れること9ヶ月で就航にこぎ着けました。
当時の旅客機では初めて自動着陸装置と自動降下装置を装備し、通常は貨物室となっている胴体下部にギャレイやラウンジのスペースが作られました。こういった最新の技術が取り込まれた機体ではあったものの、エンジンの開発遅れによる販売開始の遅れで、BoeingやDouglas社に大きく遅れたことで販売は不振で,それを打開しようとして賄賂工作なども起こり、ロッキード事件に発展しました。
手前は500型 奥は 1型 1989/5/7 DUS
胴体長に関しては2種類つくられL1011-1が1970年11月に初飛行し、キックオフカスタマーのイースタン航空での初就航は1972年となりました。胴体を短縮し,航続距離を増やしたL1011-500が1978年に初飛行し、British Airwaysは翌年に就航させています。
ライバルDC-10が胴体にセンターギアを設けることで最大離陸重量増加に対処出来たのに対してL1011にはその対応がなく、-500形による対応がなされたのは些か遅すぎた感がありました。
タイプ
L1011-1 基本タイプ 我が国でANAが導入したタイプ 160機
L1011-100 1975年 中央燃料タンク装備モデル 1500km航続距離増加 14機
L1011-200 エンジンをRB211-524Bに変更 24機
L1011-500 1978年 胴体を14フィート(4.3m)短縮して航続距離を増やしたモデル
1型を基本に最大離陸重量を増やした改造型-50型 (28機)、-150型 (6機)、 200型に同じような改造を施した -250型(6機)(ロッキード社の正式な品番ではない)などがあります。
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コメント
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こんにちは。モモパパです。
Traistar。
僕、実際に観たことはありませんが好きな航空機ではあります。
今観るとなんだか古臭いですけどそこがいいなと思ってますよ。
投稿: モモのパパ | 2014年6月 2日 (月) 08時25分
モモのパパさま、こちらにもありがとうございます。
3発ジェット方式のワイドボディ機というのは、双発方式のワイドボディ機であるB777,A330などの登場で旅客機としての活躍から今では貨物機として追いやられた感がありますね。
特にTristarはロッキード社が会社の存亡をかけて開発した旅客機でしたが、ロールスロイスの倒産などが運悪く重なって、250機の少ない販売奇数に終わってしまったのですね.ビジネス的には苦労しましたが、技術的には優れた機体でしたね。
投稿: B767-281(クハ415-1901) | 2014年6月 3日 (火) 06時05分