1989年のDüsseldorf Airport その25 Sud SE210 カラベル
1989年初夏、当時西ドイツDuesseldorf空港で撮影した旅客機の話題、今回は先日の広島市交通科学館にも模型が展示されていたフランスが産んだ最初の短距離用ジェット旅客機、Sud SE210 カラベルの話題です。
D-AAST cn 230 Sud SE-210 Caravelle 10B 1989/5/7 DUS
カラベルという愛称はコロンブスのアメリカ大陸への航海でも活躍した3本マストの帆船、キャラベル船に由来しているそうです。
1951年10月12日、フランス航空局民間資材調達委員会は国内の航空機メーカーに対して短中距離用ジェット旅客機の仕様書を公開しました。
要求された性能は
航続距離 2000km
巡航速度 600km/h前後
55~65人の乗客と1000kgの貨物を同時に運べる
というもので、
これに対する応答は多数寄せられ、SNECMA (Société nationale d'étude et de construction de moteurs d'aviation)によるアターの3発機の案とロールスロイス製エイヴォンエンジン(ターボジェット)の双発案が最後まで残り、1952年3月28日の委員会で
ユレル・デュボア航空機製造(Société de construction des avions Hurel-Dubois) HD-45
シュド・ウエスト(国営南西航空機製作所)(Société nationale des constructions aéronautiques du sud-ouest = SNACASO) SO-60
シュド・エスト(国営南東航空機製作所)(Société nationale des constructions aéronautiques du sud-est = SNACASE) X-210の3社の案を統合し、エイヴォン双発リアマウント型の SNCASE X-210 計画が選定されました。
開発費用を減らし、設計期間を短縮する目的で既に就航していたデ・ハビランド DH.106 コメットから流用できる技術は極力流用するということで1955年4月21日にロールアウト、5月27日に初飛行となりました。機首、胴体、操縦系を含む運航システムはコメットのものをそっくり流用し、おむすび形といわれる客窓もコメットの事故調査で得られた教訓に基づくものでした。
D-AAST
1956年にはエールフランスやSASからの発注が寄せられましたが、パイロットの養成やコメットの教訓に基づいて慎重が期され、就航は1958年5月となりました。損益分岐点は200機の販売ということでしたが、279機が売れるヒット作となり、製造会社にとっても航空会社にとっても世界で初めて利益を生み出したジェット旅客機となりました。
尾翼付近に双発エンジンを配置する方式はその後多くの中短距離機で採用されており、特許収入は会社に留まらず、フランス国家財政にも大きな影響を与えたそうです。
リアエンジン方式は
1)主翼全幅に渡って高揚力装置が取り付けられ、離着陸性能が向上
2)脚長の短縮、地上高が下げられ、機載タラップで対応可能
3)未整地におけるエンジンの異物吸い込みが無くなる、逆噴射時のトリム変化が少ない
4)高い水平尾翼は主翼からの剥離流の影響を受けにくい、高仰角での離着陸が可能となり滑走路が短縮できる
こういったメリットがあり、まさに植民地を持っていたフランスにとっては好都合な設計でした。
1986年6月15日、新婚旅行で初めて海外に出かけたとき、パリのCDGで見かけたAir Interのカラベル 露出に失敗して見苦しい写真です。
タイプは
Caravelle I 試作機から1.4mストレッチされた最初の量産タイプ 20機
Caravelle IA Iからさらに0.5mストレッチ、エンジン強化 12機
Caravelle III エンジン再強化タイプ 78機 これ以前のタイプの31機はこのモデルに改修
Caravelle VI-N さらなるパワーアップ 53機
Caravelle VI-R 逆噴射、グランドスポイラー、アンチスキッドブレーキ装備 56機
Caravelle VII GEがIIIを購入して、CJ-805エンジンに換装したバージョン
Caravelle 10A 1mストレッチ、最大104席 大型化 APU標準装備 試作機のみ
Caravelle 10B 10AをPW製のJT8Dに換装 22機
Caravelle 10R VI-Rに準じた短胴タイプ 最長航続距離 20機
Caravelle 11R 10を1mストレッチ、貨客混載タイプ 6機
Caravelle 12 10Bを3.2mストレッチ 最終タイプ 最大140席 12機
カラベルは小さい頃、ブリキのおもちゃで買って貰った憶えがあり、その後のリアエンジン機はT字の水平尾翼になりましたが、カラベルだけは十字の水平尾翼で印象的でした。
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コメント
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B767ー281様お早うございます。カラベルはフランスの飛行機らしく優雅な姿だと思います。ご指摘の通り垂直尾翼のあのカーブとおむすび形の窓がいい。確か保存されている機体もかなりあるような。ではまた。朝からお邪魔いたしました。
投稿: 細井忠邦 | 2015年2月 6日 (金) 07時15分
こんにちは~。モモパパです。
この航空機については僕は知りませんでした。
コメットは就航して間もなく事故を立て続けに起こしてしまった航空機でしたね。
違ったかな?
投稿: モモのパパ | 2015年2月 6日 (金) 09時06分
細井忠邦さま、モモのパパさま、おはようございます。
1989年の時点ではヨーロッパには、コメットこそ見かけませんでしたが、カラベルやBAC-1-11、さらにメルキュールというヨーロッパならでは之飛行機がありましたが、その後、エアバスが台頭してきて様相が変わってしまった感がありますね。
それでもカラベルの場合はアフリカで生きながらえて21世紀まで飛んでいたそうですね。
投稿: B767-281(クハ415-1901) | 2015年2月 7日 (土) 06時58分