パリの6つのターミナル駅巡り リヨン駅 1
前回のスハフ42形の記事で高崎鉄道ふれあいデーのシリーズは終了とし、今回からは新しいシリーズ、パリの6つのターミナル駅巡りに入ります。
1986年6月の新婚旅行や、数度に亘る出張でパリを訪問しています。海外の都市を訪れた際にその都市の中心駅を訪問すれば鉄道車輌を見ることが出来るのと同時にその国の文化や人々の暮らしの様子にも触れることができるので、駅は重要なポイントと考えています。
パリには、リヨン、オステルリッツ、モンパルナス、サンラザール、北、東の6つのターミナル駅が存在し、リヨン駅のそばにベルシー駅もあり、それぞれの駅からそれぞれの方向に独特の列車が発着しています。2009年3月にフランス・モンペリエに出張した際にパリで列車から飛行機の乗り継ぎの関係で時間があったので、6つのターミナル駅巡りをしました。
まずはリヨン駅 (Gare de Lyon) から参ります。
リヨン駅はパリを20に分ける行政区(東京23区のようなもの)でいうと12区にあり、南東部セーヌ川の北岸に面しています。パリの行政区は中心部から、時計回りに螺旋を描くように1から番号が振られており、12区はルイイ区 (Arrondissement de Reuilly)」ともよばれているそうです。面積は20の区の中で最大で、リヨン駅の他、経済・財政・産業省、オペラ・バスティーユなどがあります。
リヨン駅で最も印象的なのはこの駅舎の時計台かと思います。
リヨン駅はフランス国鉄(SNCF)のパリから南東方面に向かう長距離列車(グランド・リーニュ grande ligne)の発着駅であり、パリ交通公団(RATP)によるRER(Réseau express régional d'Île-de-France、イル=ド=フランス地域圏急行鉄道網)のA線、メトロ1号線、14号線、SNCFによるRER D線などが発着する駅となっています。
リヨン駅の案内図 2009/3/8
高架ホームの無い上野駅といった感じです。
待合ホールの風景
映画にもしばしば登場するレストラン「ル・トランブルー」(青列車) 1901年開業のベル・エポック調の装飾が有名です。
パリ・リヨン鉄道の起点駅として1849年8月12日に現在の位置よりも北のバスティーユ広場に近い位置に開業しました。1855年、現在の位置に盛り土し、移設され5線のホームが全長220m、幅42mの大屋根で覆われ、両側に出発用、到着用のホールが設けられる壮大なものとなりました。1900年のパリ万博に合わせて3代目の駅が開業し、現在の青ホームに相当する13線のホームが設置されました。
駅舎もこのときにマリウス・トゥードワールの設計により造られました。1977年RER A線が乗り入れ、1981年にはTGVの発着に対応して、地平ホームが既存のホームの約200m東側を終端として増設されました。これが今の黄ホームです。
黄ホーム終端から青ホーム終端 約200mの距離があります。
1988年6月27日、リヨン駅地下ホーム(現在はRER D線ホーム)ではパリ鉄道史上最悪の列車衝突事故が起きています。私はこの事故をNational Geographic Channelの「衝撃の瞬間」シリーズ3-11 Paris Train Crashで知りました。
現在は殆ど引退しているようですが、当時パリ北駅の近郊線ホームで見かけたZ5300タイプ 2009/9/19
同日夕刻6時36分頃、リヨン駅に向かう近郊電車Z5300形 8両編成がダイヤ改正で停車駅を勘違いした女性乗客によってリヨン駅手前 8kmのLe Vert de Maisons駅で非常ブレーキが引かれ、緊急停止しました。運転士と車掌は列車の運転再開のため、ブレーキのリセット操作を行いましたが、その際にブレーキ管に空気を送るレバーを間違って操作し、安全システムの存在を誤認して、ブレーキが効かない状態で発進させてしまいました。途中、Maisons-Alfort駅で停車する予定でしたが、約26分の遅れのため通過となり、そのままリヨン駅に向けた下り坂に進入してしまいました。
一方、リヨン駅地下ホーム2番線では出発予定の電車が車掌の到着遅れのため、出発が遅れていました。出発が遅れた場合、到着列車は信号プログラムにより別のホームに誘導されるはずでした。
リヨン駅に向かう列車はブレーキが効かないことに気付き、管制室に非常事態を連絡、さらに車掌と連絡して、乗客を後部に避難させ、車掌は非常ブレーキ用ハンドブレーキを操作しますが、速度は落ちません。運転士は非常警報ボタンを押しました。
リヨン駅管制は非常事態を出発予定列車に伝え、帰宅ラッシュで満員の乗客を車外に出すように誘導します。車内はパニックに陥り、7時9分、2番線に暴走列車が突入し、正面衝突を起こし、逃げ遅れた乗客、最後まで乗客に避難を呼びかけた出発列車の運転士など乗員乗客56名が死亡、55名が負傷する大惨事となりました。
事故調査により、(1)ブレーキシステムが効かない状態で発車(2)ブレーキチェックが出来るはずの停車駅が遅れのため通過となる(3)運転士がパニック状態になり、電気ブレーキを使用しなかった(4)暴走列車を空いている線路に誘導するポイント切り替えシステムが、無線交信の際に列車名を伝えなかったために列車を特定できず、かつ信号プログラムが非常警報の作動でリセットされてしまい、空いたホームに誘導するシステムがキャンセルされてしまった。という不幸な偶然の重なりで事故に至ったことが分かりました。
1995年にはRER D線リヨン駅~シャトレ・レ・アル駅間が開業し、地下の近郊線ホームがD線ホームとなり、1998年にはメトロ14号線が開通しました。
最後まで読んで戴きありがとうございます。
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コメント
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B767−281様 お早うございます。新シリーズも良いですね。パリリヨン駅、私にとっては映画に良く出てくる駅です。(笑い)それにしても長い歴史のなせる技で、凛々しいですね。日本では京都駅、大阪駅のようにただ大きくすればいいみたいな不細工(済みません。言い過ぎか?)な駅が多くなってしまった気がします。其の点東京駅はいいですが。年月の流れとともに改良も必要でしょうが、外見、イメージも大切だと思います。この続きも楽しみにしております。
投稿: 細井忠邦 | 2015年3月19日 (木) 07時59分
細井忠邦さま、おはようございます。
早速、コメントありがとうございます。
確かに、映画のシーンに出てくる駅というのは別れと出会いの場としてよく用いられますね.特に昔のヨーロッパ系映画、イタリア、フランス映画に多いようですね。
そこに文化的な意味があるのでしょうか。
やはり、シンボル的な駅舎というのは大事ですね。
投稿: B767-281(クハ415-1901) | 2015年3月20日 (金) 06時05分