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2016年2月14日 (日)

東京総合車両センター公開 その3 首都圏直流電車の主電動機 part4 MT55

2015年8月22日の東京総合車両センター公開での直流電車の主電動機展示に沿ったこのシリーズ、青森/北海道旅行前のドタバタで前回は1回飛んでしまいましたが、今回は103系に使用されたMT55形主電動機について触れます。

Mt55_150822 2015/8/22 MT55 展示パネル 東京総合車両センター

103系に関しては拙blogにおいて別のシリーズがあり、その最初の記事でMT55に関して触れていますが、今回はもう少し踏み込んでみようと思います。

新性能電車の第一系列として登場した101系では、試作車に東洋電機製造の出力100kWのMT46形、量産車はMT46A形 が搭載されました。国鉄では同じモータを各種タイプの車両に搭載し、ギヤ比を変化させることでそれぞれの用途に対応させる方針を採用しており、MT46Aも特急形151系、急行・準急形153系、近郊形111系などに搭載されました。電化区間が山岳線区に広がり、勾配区間での運転に対応するため、出力を120kWに上げたMT54形が開発されました。

1957年12月、101系は10両全電動車編成で運転を開始したものの、使用電力量の多さが問題となりました。運転方法は起動加速度を3.2km/h/sとし、応荷重装置を使用して、限流値を空車時350A、満車時480Aとしました。起動時のピーク電流は5600Aに達し、架線溶断の危険性が指摘されました。その結果、応荷重装置は不使用とし、限流値を280Aに固定し、ピーク電流は3650Aに抑えて運転することとしました。
この運転方法を旧形車 (6M4T編成) と比較すると、満車時の101系の起動加速度 約2.2km/h/s 旧形車約2.0km/h/sであり、新性能化、全電動車化の効果が殆ど発揮されていないことが明らかとなりました。

量産車は1958年3月に投入され、運転を開始しますが、状況は改善されず、全電動車計画は同年11月に断念され、MT比を1:1に近づける方向に方針変更されました。

今度は主電動機の温度上昇が問題となりました。1959年11月に営業列車を使用してMT比1:1 (4M4T)の条件での主電動機の温度上昇試験が行われました。その結果、限流値を350Aに設定し、空車、満車条件での温度上昇は限界温度以上であることが判明しました。さらに、この頃、電動機の熱容量を実車試験を行わず机上で計算する方法として、RMS(root mean square value 実効値)電流計算法が普及し、主電動機の温度上昇限度としてRMS電流値が一時間定格電流の80%以下でなければならないことが、速度定数査定基準規定(1964年12月10日)(第33条)に定められました。

MT54形が開発される過程で国鉄では1961年に出力120kWのMT909を試作し、101系モハ101-69+クモハ100-70ユニットに搭載し、試験が行われました。この結果が、日立製作所のMT54形として実を結びました。一方で、電力回生ブレーキに関しては試作910番台MT50形電動機が搭載され1960年6月から7月に試験が行われました。しかし、大量製造する通勤電車にしてはイニシャルコストが高すぎると言うことで採用には至りませんでした。

1959年末には101系を引き続き通勤線区に投入し続けることは断念され次期通勤車両として、経済的な車両の開発が唱えられました。その方策として「オール電動車+回生ブレーキ装備」、「MT比1:1で高出力電動機装備」の二案が検討されました。まずMT54を次期通勤車両に搭載することは出力アップの分だけ、起動電流が上昇し、使用電力量が増え、熱容量的にも限界を超えることが問題になり、可能性として排除されました。
その結果、経済性が最優先され、通勤用途に適合した新たな電動機が設計されることとなり、MT55形が開発されました。

103_050827 2005/8/27
2005年当時の同所の公開では首都圏で活躍中の3色の103系が展示されていました。

MT55の特徴は出力110kW、定格回転数1350rpm (85%界磁) で出力的にはMT46Aの100kW、MT54の120kWの中間、定格回転数ではMT46Aの1860rpm (70%界磁), MT54の1630rpm (100%界磁)に較べかない低速なモーターとなっています。許容回転数はMT46A, MT54が4320rpmなのに対して、MT55は4400romとなっています。
駅間の短い線区に投入され、高速での走行の少ない線区で使用される通勤車両、しかも大量生産される車両としては当時、これしかない選択だったようです。

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コメント

B767-281様今晩は。お隣の西武鉄道ではMT54装備の通勤型が幅をきかせていたのに、国鉄で実現しなかったのは摩訶不思議てす。特殊が標準になってしまう、それほど切羽詰っていた通勤状況だったのですね。一つ前のコメントまた途中で送られました。
すみませんでした。

細井忠邦さま、こんばんは。

確かに仰る通りで、西武では国鉄が本格使用する前のMT54同等品を使っていましたね。やはりその辺は、国鉄と西武の事業規模、投入される車両数、投入路線の違いなんでしょうか。

西武の場合、601系 7本、701系 48本、801系 5本 に対して103系は101系に代わって投入が予定された山手、京浜東北線だけでもかなりの数に及ぶため、経済性を考慮したのでしょうね。

おはようございます。

西武の新性能化した401系も MT54の系統に入るのでしょうか。


常磐快速線、武蔵野線、京葉線、東海道山陽慣行線の103系には無理がありました。

MT55には的さない線区があります。

準急豊島園さま、おはようございます。

701系のクハから電装化された501系は101系と同じ機器でしたが、
冷房改造された401系はMT54系列でしたね。忘れていました。

103系の増備の際は、とにかく新車をとリクエストが多くて、仰るような線区にまで本来の特性を考慮せずに投入することになってしまったのですね。
逆にその投入が103系としての評価を下げることになったようですね。

こんばんは。

MT55は高速域ではかなりうるさかった記憶がありますが、高加速に特化した仕様のモーターだったのですね。

そういう見方からすると、西武101系の150kWモーターなんて、設備的に良く使えたな、と思ってしまいますね。

MiOさま、おはようございます。

技術の発展の歴史、電車のモーターも出力、使用電流、熱容量などいるいろなファクターと闘いながら発展していったのですね。

もはや直流直巻き式モーターの車両が作られることはないのかと思いますが、興味深い歴史ですね。

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