公園保存車両 岡崎南公園 その2 HSST
日本全国の公園等に保存されている航空機、鉄道車両を見て歩いているシリーズですが、今回は前回に引き続き2014年8月12日に訪問した岡崎南公園に保存されていたHSST-03です。
HSSTとはHigh Speed Surface Transportの略で、日本が開発を進めた磁気浮揚式鉄道技術です。日本航空や名古屋鉄道が中心となって開発を進め、HSST-100、-200, -300の3システムが開発され、その後、私は行きませんでしたが、2005年3月6日から半年間、当時の長久手町などで開催された「愛知万博 愛・地球博」輸送で実用化され、閉幕後は愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)として運行が続けられています。
日本航空が開発に大きく関わっていたことからも分かるようにこのシステムは都心と60km以上も離れた成田空港へのアクセス時間の短縮を目指したのが開発のきっかけでした。
世界でこういった高速交通システムの開発競争が1960年代から1970年代にかけて熱心に行われ、西ドイツは軌道一次式リニア同期モータを採用したトランスラピッド(MBB社 メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム)、フランスは圧縮空気の圧力で浮上し、プロペラやジェットで推進するアエロトランの開発に力を入れ、日本航空は西ドイツのクラウス=マッファイ社のトランスアーバンの吸引式磁気浮上技術を導入して、1974年頃から開発を行うことにしました。
HSSTでは浮上と案内を兼用した車上一次式リニア誘導モータ方式としており、技術目標は時速300km走行でした。浮上は常電導電磁石方式で、JR東海が建設中のリニア新幹線は超伝導電磁石方式(理想的には-269℃、4度K冷却での超伝導による永久電流磁石)でのです。
HSSTの場合、車体を浮上させるのと案内するのはひとつのシステムで行われており、車体の浮上量は10mm程度です。推進力は車体側にインダクションモーターの電機子側の機能に相当する一次コイルを、軌道側に回転子に相当する二次側金属プレートを持たせ、車両側で磁極切り替え制御を行います。
ブレーキはリニアモーターからの制動力による電気ブレーキを通常ブレーキに、また油圧ブレーキに連動したブレーキシューが軌道側の浮上案内レールを挟むことで制動力を得ています。
車上の推進コイル、浮上コイルに電力供給が必要なため、給電装置は軌道に設置された電車線から車両側に設置された集電装置で直流1500Vを接触給電しています。
軌道はHSST-03では上の写真のように2本の軌条が車両の両側から支えるダブルビーム方式でした。
HSST-100は都市型交通システムのような比較的短距離路線を想定したもので愛知高速交通東部丘陵線はこの実用例となりました。
HSST-200は比較的幅の広い適用範囲を想定した中距離路線を想定したもので、4~5台を連結し、最高速度200km/h程度ではしるものです。
HSST-300は高速大量輸送方式でHSST-03はこのモデルでした。
HSST-03は1985年の筑波万博、1986年のバンクーバー国際交通博覧会、1987年の岡崎葵博覧会でデモ走行を行い、岡崎葵博覧会の後、南公園に保存となったとのことです。私も筑波の万博は見に行きましたが、果たして乗ったかどうかの記憶はありません。
1989年の横浜博覧会では開催期間中営業路線として運行されました。
自宅に「科学万博-つくば’85の公式ガイドブック」があるので、HSST展示について調べてみると、直線の軌道が上の地図のようにAブロックの左隅に敷かれて展示走行が行われたようです。
また、ガイドブック73ページに広告、254,255ページに詳しい解説がありました。
1966年大船駅から横浜ドリームランドを結ぶドリーム交通モノレールが開通しましたが、翌年橋脚の強度不足が発覚し、運休となりました。1982年、ドリーム開発がこの路線を買収し、HSSTの導入を計画しましたが、親会社ダイエーの経営状態が悪化し、計画は頓挫し、2003年正式に廃線となってしまいました。
広島市は白市駅から広島空港までの約8kmの鉄道敷設を計画し、HSSTの導入を検討しましたが、従来方式に計画が変更され、2006年9月には断念に至りました。
海外への売り込みも目指し、HSSTシステム販売会社も設立され、中国、台湾、アメリカなどに売り込みを図りましたが、受注に至らず2011年12月2日に会社は解散しました。
もとっも、新幹線、潜水艦、さらに国内での悲惨な事故の収集すら覚束ない原発までをトップセールスする政権の時代であったら結果は違ったかも知れませんが。
2015年現在では愛知高速交通東部丘陵線が唯一HSSTの営業路線となっています。
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