東京総合車両センター公開 その3 首都圏直流電車の主電動機 part6 MT60 及び MT60A
2015年8月22日の東京総合車両センター公開での直流電車の主電動機展示に沿ったこのシリーズ、今回は MT60形及びMT60A形 主電動機です。
MT60 および MT60Aの展示 2015/8/22 東京総合車両センター
60と60A の違いは端子箱の有る無しの違いのようです。
国鉄電車用の主電動機としては381系に搭載されたMT58形がありますが、大井工場の担当ではなかったので紹介がありませんでした。
201系 試作編成 三鷹電車区
1979年、昭和52年度第2次債務で落成した試作車が三鷹区にいるとの噂を耳にして、南大泉の自宅から自転車で駆けつけました。
1981/8/29 千駄ヶ谷
中央快速運用に入った量産車、登場は1981年からでした。
MT60およびMT60Aは国鉄初の電機子チョッパ制御方式が導入され、電力回生ブレーキも装備された201系と203系0番台(MT60), その改良型である201系モハ201/200-264以降、203系100番台(MT60A)に装備されたモータです。定格回転数は1850rpm、最高回転数4850rpmとMT54やMT55に較べると定格回転数の高いモータでした。出力も150kWとMT63と並んで最高ですが、特性が高速域にシフトしており、低速域での加速性能はMT55搭載の103系と大差ありませんでした。弱め界磁も45%まででした。
201,203系の制御システムは主回路にCH1系電機子チョッパ制御器とHS36形補助制御器(試作車)、CS53系主制御器を組み合わせて搭載し、直巻整流子電動機MT60を制御する方式です。
電機子チョッパ制御は主電動機の電機子回路(主回路)をチョッピングし、起動・加速段階から無段階、無接点、熱損失によるロスの少ない制御が行え、さらに中速域から低速域までの電力回生ブレーキの使用が可能というメリットがある反面、大電力を制御するための素子が必要であり、誘導障害や騒音の問題があり、回生ブレーキ作動時に昇圧チョッパ回路が構成されるため、高速域での回生電圧が架線電圧を大幅に上回り、回生失効しやすい問題点もありました。電機子チョッパ方式を我が国で初めて採用したのは阪神の7001と7101形で、回生ブレーキ付きで実用化したのは営団6000系でした。
このため、地下鉄以外の私鉄各社は容量の小さい複巻電動機の分巻界磁電流をチョッピングして回生ブレーキを使用可能とした界磁チョッパ方式を多く採用しました。これは電機子チョッパ方式は製造コストが高いことと、起動時の抵抗制御によるロスよりは電力回生ブレーキを装備する優位性を優先した結果でした。
2004/5/1 下神明
東急8000系は回生制動が可能な他励界磁チョッパ制御方式を世界で初めて実用化し、運転台操作系では量産車では日本初のワンハンドルマスコンを採用した車両です。
203系100番台では、一番上の写真のように端子箱を廃したMT60A主電動機が装備されました。
一方、国鉄では界磁チョッパ方式も591系試験電車で検討されたものの、構造が複雑で、架線電圧が変動した際に一時的に大きな電流が流れる特性を持ち、過渡特性が若干悪いため、直巻電動機に較べブラシ・整流子の点検周期が短い複巻電動機の採用に保守現場からの反対が強く、従来の直巻電動機を用いた界磁添加励磁制御方式が開発されたこともあり、界磁チョッパ方式は採用されませんでした。
因みにチョッパ制御方式の最終形は営団地下鉄銀座線01系登場時に開発された高周波分巻チョッパ制御方式で、電機子チョッパと界磁チョッパの両方を組み合わせた方式で電機子チョッパ回路に、並列する形でモータの分巻界磁を制御する4つのチョッパ装置を、分巻界磁を接続したブリッジ回路に取り付けた回路構成で、「前進力行」「前進ブレーキ」「後進力行」「後進ブレーキ」の4つの運転モードの切替えを、4つのチョッパ装置で連続かつ円滑に行うことができる方式であり、4象限チョッパ制御 (4Quadrant: 4Q) とも呼ばれています。この方式はGTO(ゲートターンオフサイリスタ)の開発で可能となったそうです。もっとも、現在はGTOもIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)に取って代わられようとしています。
最近はチョッパ方式からVVVF方式が主流ですが、そのVVVFでも誘導電動機の回転子に永久磁石を埋め込んだIPMSM (Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)という方式が回転子に流れる誘導電流によるエネルギー損失を抑える方式がメトロ16000系などでは適用されているそうです(参考記事)。
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コメント
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B767-281様今晩は。201系のシステムは近郊形まで展開する予定だったようですね。ちょっと逆戻りした205系の制御システムでようやく実現しましたが。そうこうしているうちに、VVVFの時代となって通勤形と近郊形の区別がなくなってしまいました。西日本が環状線まで3扉になっていくのも興味深いです。その一方で私鉄ではロングクロス転換車が流行しだしたのにも興味がわきます。京王新5000系どのような運行形態になるか楽しみです。チョット広がり過ぎで済みません。
投稿: 細井忠邦 | 2016年3月23日 (水) 20時40分
細井忠邦さま、おはようございます。
今回のチョッパ技術の一連の流れ私も、201系が素子が高くつきすぎて波及しなかったということは知っていたのですが、同じ時期に私鉄は違う方式の界磁チョッパ方式を導入、波及したことはあまり知らなかったのですが、調べてみてよく理解できました。その後,両者はVVVFに統一されてゆきますが、それもこれもパワートランジスター技術の発展の結果であるということが良くわかりました。
投稿: B767-281(クハ415-1901) | 2016年3月24日 (木) 06時44分