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2016年4月11日 (月)

東京総合車両センター公開 その3 首都圏直流電車の主電動機 part7 MT61B MT61C

2015年8月22日の東京総合車両センター公開での直流電車の主電動機展示に沿ったこのシリーズ、今回は MT61B形及びMT61C形 主電動機です。

Mt61b_61c_1508222015/8/22 東京総合車両センター

MT61形主電動機は本来、近郊形713系向けに開発された直流直巻整流子電動機で端子電圧500V、1時間定格出力150kWでした。サイリスタ位相制御により、他励界磁を導入し、国鉄交流電車として初めて交流回生ブレーキが採用されました。

 

713_850420_21985/4/20 鳥栖
713系900番台 登場した頃の姿

1984年2月1日のダイヤ改正で長崎本線の機関車牽引列車を電車化するために581・583系改造の近郊形電車715系の改造分を補足するために試作編成900番台4編成8両が東急車輌製造と日立製作所で製造され、南福岡電車区に投入されました。しかし、国鉄の財政悪化で余剰となった急行形電車の車体載せ換えおよび近郊形改造による必要数投入に方針転換されたため、試作編成からの量産はなされませんでした。ただ、技術開発の成果は以後に登場した783系、811系、787系、阿武隈急行8100系などに活かされました。

一方で、”省エネ電車”201系を世に送り出したものの、電機子チョッパ方式では製造コストがかかりすぎるため、国鉄は首都圏山手線の103系111,113系、115系置き換え用車両に大幅なコストダウンが図れ、従来の直流直巻式電動機が使用可能な「界磁添加励磁制御」方式を採用した車両の開発が行われていました。

 

103_205_8503231985/3/23 代々木
103系と顔を揃えた投入直後の205系

1985年3月のダイヤ改正で横浜線・武蔵野線の輸送力増強を行うことになり、山手線の103系を捻出するための車両が必要となりました。既存の201系を増備するか、新規の形式を立ち上げるかの議論の結果、1984年6月末に次期近郊形システム(界磁添加励磁制御方式:東洋電機製造)の通勤形車両の製造が決まり、1985年1月末に第一編成が落成、デビューまで僅か7ヶ月という短期間の設計・製造となりました。

界磁添加励磁制御は抵抗制御の延長上にあるシステムで、

・力行時は電動機を流れる主回路電流はバイパスダイオードを介して抵抗器に流れることで抵抗制御および直並列制御で加速が行われる。

・誘導分路にある界磁接触器がオンとなり、誘導コイルを接続し、外部三相交流を電源とする添加励磁制御による位相制御で整流・制御された直流電圧による電流で、誘導分路に流れる主回路電流とは逆向きの電流を流して、電動機の弱め界磁制御を行う。

・減速時は誘導分路にある界磁接触器がオンとなり、添加励磁制御で整流・制御された直流電圧による逆向きの電流が誘導分路と電動機の界磁を介して流れ、それにより電動機の電機子での逆起電力の大きさを変えて回生ブレーキを行う。

三相交流電源が必要であるものの、位相制御用の半導体素子は小容量で済み、直巻電動機が使えるといった利点がある一方で、起動時に進段や回路切り替えによる前後衝動がある、回生制動の低速域での効用範囲が狭い(20km/h程度で失効)、直流電動機使用のためブラシのメンテナンス等の問題がありました。

ちょうど国鉄からJRに移行する時代に多くの車両に採用され

国鉄 205系 211系 213系

JR東日本 205系 211系 215系 251系 253系 651系
JR東海 補助電源を直流としている点が特徴 DC-DCコンバータ
211系(6000番台はC-MT64A) 213系 311系 371系
JR西日本 205系 211系 213系 221系(2M方式)

東武鉄道 200系

帝都高速度交通営団 5000系 1989年製造分

東葉高速鉄道 1000形 1995年営団5000系を改造

長野電鉄 2100系 (JR東253系)

富士急行 6000系 (JR東 205系) 8500系 (JR東海 371系)

名古屋鉄道 100系 1800系 5300系 5700系 6800系

京阪電気鉄道 2200系 2400系 1000系 5000系

山陽電気鉄道 5000系

などの採用例があります。

205系の場合、主電動機は713系用に開発されたMT61形を端子電圧375V、定格回転数1530rpm、定格出力120kW 弱界磁率最大35%、最高回転数4600rpmとして使用しています。

制御装置はCS57形となりました。電動カム軸式でノッチ戻し機構も搭載されており、力行時の抵抗制御段数は直列13段・並列11段です。1器の主制御器が8台の主電動機を制御する1C8M方式です。
MT61A, B, C1, C2は冷却ファンが外扇方式か内扇方式かによる区別のようで、AとC1が外扇方式だそうです。京葉線生え抜きの205系は内扇式モーター搭載で投入されていますが、検査時に外扇式と交換されることもありました。

界磁添加励磁制御方式ではありませんが、MT61系主電動機搭載の車両は
JR北海道 721系 JR九州 811系
などもあります。

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コメント

B767-281様今晩は。MT61主電動機広く使われているのですね。チョッパ制御に比べ後戻りした感じですがこれも時代の要求なのかな?現在省エネへの要求は強くVVVFでさえ更新が行なわれていますね。西日本は221系の更新を進めていますが、国鉄時代から吹田工場は仕事が丁寧でした。ステンレスではない車が生き残るのもいいなと思います。

細井忠邦さま、こんばんは。

わたしもMT61は211系や205系などの界磁添加励磁システム用に開発されたモータかと思っていましたが、そうではなかったことを今回知りました。

国鉄の場合、電気子チョッパ方式は採用したものの、素子にコストがかかり過ぎ、低コストの素子で直巻電動機が使えて、コストが安いということで界磁添加励磁になったのですね。
VVVFの時代はその後、ブラシレスの誘導電動機が使えるメリットが大きいと思いますが、VVVF装置の素子はある程度時間が経つと交換しなくてはいけないようですね。

B767−281様今晩は。なるほどVVVFの素子交換、わかりました。だからE231系が機器更新のために入場しているのですね。普段使っている京王でも8000系のVVVF更新が始まっています。勿体無い様に思えますが、取り替えれば40パーセントも省エネなどど言われてしまえば、潮時なのかな、と納得してしまいます。東日本で183系や189系が波動用といえども残っているのは不思議です。基本は抵抗制御車が一番扱いやすいのかな、と思ってしまいます。

細井忠邦さま、おはようございます。

思えば185系ですら引退かと言われている今日、それ以前の183系、189系が残っているのも不思議ですね。

E351系などのリタイアが進めは様相もかわってくるのでしょうかね。

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