Frankfurt am Main Airportでのspotting 8 Iran Air Boeing747SP
冷戦時代の1989年5月、Frankfurt am Main空港でのSpotting. 前回まではBoeing 707 や Douglas DC-8といった第一世代のジェット旅客機の写真を紹介してきましたが、今回からはBoeing 747に参ります。
西ドイツの空港として西ベルリン・テーゲル空港(正確には西ドイツではなく占領4か国ですが)、デュッセルドルフ空港では当時、Boeing747は定期便ではおそらく就航していなかったので、このシリーズでも747の登場は初めてとなります。
747は1969年2月に初飛行し、Pan Amが20機発注したのをきっかけにNorthwest, TWA, JAL, BOACなどが続々と発注するようになりました。ただ当時の航空業界としては大陸間を短時間で飛行できる超音速旅客機が次の世代の本命と考えられており、747はその時代が来ればいつでも貨物機に改修可能なように設計されていました。しかし、その後のオイルショックによる燃料費の高騰や騒音問題でBoeing 2707の開発は中止、コンコルドも発注が相次いでキャンセルされる事態となりました。
747の最初のタイプは-100型でエンジン出力不足から航続距離が伸びない等のトラブルもありました。多くのこの時代にPan AMのファン・トリップ会長の東京~ニューヨーク間無着陸直行便構想で開発されたタイプが747-SP (Special Performance)でした。
胴体を短胴化(約70mを56.31mに)し、重量を低減することで航続距離の増大を図りました。短胴化によるモーメントアームの減少に対応して水平、垂直尾翼を翼端で1.5m延長しています。フラップも下翼面のフラップトラックのないシングルスロッテドタイプになりました。また、胴体短縮効果は断面積変化を小さくすることで音速付近での抗力の増大を抑える効果があることが見つかり、SPの巡航速度の向上、さらには2階席延長SUDタイプの開発に繋がりました。
1973年に開発開始、Pan Amが11機発注でローンチされ、1975年5月19日にロールアウト、7月4日に初飛行しました。1976年4月25日、東京~ニューヨーク無着陸直行便が就航し、アンカレジ経由で運航していたJAL, NWは大打撃を被りました。しかし、定員の少ないSPへの興味は示さず、JALは1983年にJT9D-7R4G2エンジン(本来は-300用)を搭載した通称Exective Expressと呼ばれた3機(JA8161, JA8162, JA8169)を導入し、挽回しました。
SPはこの間、政治的理由で超長距離路線運航を強いられていた中国民航、China Airlineやサウスアフリカ航空、エルアル航空、さらに既に-100や-200を運航していたTWA, ブラニフ、アルゼンチン航空、大韓航空、イラン航空、さらには通常の747ではキャパシティが大きすぎると考えていたシリア航空、モーリシャス航空などが導入しました。
Pan AmはSPを使用して1976年5月1日から3日までの間にニューヨーク~ニューデリー~東京~ニューヨークの世界一周飛行を行い、46時間46秒の世界最速記録を樹立しました。
上記のJALによる747-200Bタイプの東京~ニューヨーク間無着陸便就航やー400の開発開始て受注は減少したことから、1989年に生産中止となりました。最終的に45機の生産でした。生産中止後も超長距離路線の運航機材を必要としたナミビア航空、アメリカン航空、ルクスエアやバーレン、オマーン、カザフスタンなどが政府専用機として中古機を導入しました。
Iran Airは
cn ln 納入日 Name
EP-IAA 20998 275 1976/3/12 Persian Gulf
EP-IAB 20999 278 1976/5/10 Khorosan
EP-IAC 21093 307 1977/5/27 Persian Gulf
と3機のSP-86 を長らく運航しており、成田にも2011年まで就航していました。むしろ、これら3機のSPは当初、ニューヨーク線専用機材として導入され、革命でニューヨーク乗り入れがなくなった後は成田線専用機材として活躍していました。
生憎、今回紹介する写真ではレジの判別ができません。通常は垂直尾翼上方の青い部分にレジの一部AA,AB,ACが書かれているのですがこの機体ではそれが消されています。
Iran Airの歴史については別の機会に触れるつもりですが、747SPのように長らく古い機材を就航させているのは1979年のイラン革命以後、アメリカによる経済制裁で西側航空機の購入が不可能になったからです。2015年、経済制裁が解除され、今後5年くらいをかけて革命前に購入した旧世代機を更新して行く予定とのことです。
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B767-281様こんばんは。SP掲載のイランは良く摂りました。かつてはユナイテッドとパンナムのハイブリッドやアメリカンも初期の日本路線に飛ばしていて、珍しい機種にしては馴染みがあります。やはり飛行機の進歩はエンジンですね。
投稿: 細井忠邦 | 2016年7月 8日 (金) 20時15分
細井忠邦さま、こんばんは。
747も初期の頃はエンジンで苦しみましたね。水噴射なんて言葉も久しぶりに聞き、初期のJT9Dの時代を思い出しました。
-200BではPW, GE, RRの3社のエンジンは選べるようになり、それから発展して行きましたね。
SPのちょっと形の違う垂直尾翼、印象的でしたね。
投稿: B767-281(クハ415-1901) | 2016年7月 8日 (金) 20時23分