Boeing 787、開発から就航当初のトラブル その1
Boeing 787は次世代中型機7E7として計画されました。EはEfficiency(効率)の頭文字で、そうなった背景は21世紀初頭、ボーイング社は経済性よりも速度を重視したソニッククルーザーの開発を進めており、一方Airbus社は超巨人機A380の開発に忙殺されていました。ところが、燃費が悪く、速度向上も僅かなソニッククルーザーは航空会社からは見向きもされず、燃料費の高騰は航空会社の経営を圧迫するようになりました。
2017/4/22 HND JA802A Boeing 787-8 cn34488 ln8 2011/9/26登録 1,2号機の特別塗装
一方で、787のローンチカスタマーとなるANAは2001年末の羽田の再拡張でD滑走路の建設が決まり、大型機による一度の大量輸送から、中型機による高頻度の輸送、すなわち従来のBoeing 747-400D、777-300といった大型機から767-300クラスの中型機をメインにした機材構成への転換を模索していました。
767-300は1980年代の技術でつくられた旅客機であり、21世紀の最新技術を導入して、経済的に運航できる機体が今後は重要なのではないかと航空機メーカーに提案をしました。
2017/5/14 HND JA809A Boeing 787-8 cn34494 ln47 787ロゴ入り塗装
ボーイング社はANAのこの提案を受け入れ、2004年7月ANAの確定発注により、ソニッククルーザー計画は中止し、7E7、後の787の本格開発をスタートさせました。2004年7月26日のANAの確定発注の内訳は国際線用787-8を20機、主翼端のレイクドウイングチップをウイングレットに変更し、翼幅を短縮した国内線向け787-3を30機でした。
777の開発時と同様に発注から4ヶ月後にはANAの技術チームがシアトルに赴任し、ワーキングトゥギャザー方式で設計が固まる前から航空会社の要望を反映させる作業が進められました。当初、ボーイング社は787を長距離機として構想しており、機体構造が高頻度の離着陸を想定していなかったそうですが、ANA技術チームは粘り強く要望を通したそうです。787の開発は2001年9月のアメリカ同時多発テロ以来、航空需要の落ち込みを苦慮していた世界中の多くの航空会社の賛同を呼び、実機が出来上がる前に700機近くも確定発注を得るという事態になりました。
2017/4/15 HND JA825A Boeing 787-8 cn34516 ln148 ANA通常塗装
初号機のロールアウトは2007年7月8日でした。ANAが選定したエンジンはロールスロイスのTrent-1000が選択されました。ANA機におけるR&Rエンジンの採用はロッキードL10 11トライスター以来となりました。
787は機体構造の50%に炭素繊維複合材を使用、日本国内企業が約35%の製造に参加するというボーイング旅客機として新しい試みが取り入れられましたが、炭素繊維複合材を接合するファスナー不足や主翼ボックスの強度不足、ロールスロイスエンジンの開発遅延などで開発は大幅に遅延しました。
初飛行は2009年12月15日に成功しましたが、それ以降も多くの問題が発覚し、一時は飛行試験が中止される事態にもなりました。こういったスケジュールの遅れは、派生型の開発順序も変えることになりました。当初は787-8の次に787-3、そしてストレッチ型の787-9でしたが、787-3はANAとJALしか発注がなかったため、787-3の開発は取りやめ、JALに続いてANAも787-3の発注を787-8に切り替え、2010年9月30日時点で55機発注していた787-8のうち、15機を国内線仕様で400席となる787-9に変更することとしました。
ANAへのデリバリーは2011年9月26日で、エバレット工場で行われ、受領後の9月28日に羽田に到着、路線デビューは11月1日、羽田~岡山、羽田~広島でした。その前に10月26日には成田~香港チャーターフライトや同年3月11日に発生した東日本大震災復興を応援する仙台特別フライトなども実施されました。国際線デビューは2012年1月14日、成田~北京線、そして長距離国際線は1月21日、成田~フランクフルト線でした。
しかしそれから1年後の2013年1月からリチウムイオンバッテリのトラブル、GEnXエンジンの氷晶アイシング問題、RRトレント1000エンジンの中圧タービンブレード問題とトラブルが続出します。その辺は明日の記事で。
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