養老鉄道 今の会社とは同名異会社の複雑な歴史
2017年8月の愛知・三重旅行の話題、続いて岐阜県西部と三重県北部を走る養老鉄道について触れようと思います。
この鉄道の歴史は美濃国大垣藩藩士の次男で東京で弁護士となり、さらに実業家に転身した立川勇次郎(1898年には大師電気鉄道、現、京浜急行電鉄の代表に就任)が出身地の大垣からの要請で、岐阜県西濃地区の発展のためと1913年7月31日に養老~大垣~池野間を蒸機運転で開業したのが始まりでした。
大垣駅は東武野田線(アーバン・パークライン)柏駅と同じようにスイッチバック式の駅となっています。
1897年4月21日、仮免状が下付(関西鉄道桑名停車場-岐阜県脛永間)され、1911年3月28日には軽便鉄道に指定されています。立川は1911年7月19日に社長に就任しました。
2016/9/2 大垣 JR線との連絡改札口、こちらは自動改札機が設置されているようです。
1919年4月27日には桑名~養老~揖斐間57.5kmが全通しました。立川は1912年に大垣を中心とした西濃地区の電力供給を目的として揖斐川電力(現、イビデン)を設立しており、1921年2月、揖斐川電気に社名を変更、1922年6月、養老鉄道を合併しました。1923年5月には直流1500Vによる電化が完了、立川が1925年12月14日に死去した後、1928年5月、鉄道事業は養老電気鉄道に譲渡、その後、1929年10月1日、伊勢電気鉄道が養老電気鉄道を合併、しかし、昭和恐慌や五私鉄疑獄事件で伊勢電気鉄道は経営トラブルに陥り、1936年5月新たに設立された養老電鉄に営業権を譲渡、1940年8月、参宮急行電鉄(参急)が養老電鉄を合併、さらに1941年3月15日、大阪電気軌道(大軌)、参急が合併し、関西急行鉄道が成立、1944年6月1日、近畿日本鉄道が成立し、近鉄養老線となりました。
2017/8/4 桑名駅
かつては同一会社でしたが、現在は経営分離されたため、近鉄ホームとの間にはゲートが存在します。5番線は欠番です。奥に見えるのはJR東海のホームです。
しかし、慢性的な赤字路線であったため、2006年に近鉄から沿線市町村に金銭的支援の可否について協議が持ちかけられました。その内容は
1.近鉄100%出資の子会社「養老鉄道株式会社」(本社:西大垣駅内)を設立し、その子会社が養老線の運行に当たる。
2.養老線の施設は従前通り近鉄が所有・管理し、「養老鉄道株式会社」は養老線の営業・運行のみを行う(広義の上下分離方式)。
3.新会社による養老線運営移管は、2007年10月1日となる。
4.各沿線市町は、2007年- 2010年にかけて、「養老鉄道株式会社」に対して下記の内容の支援を行なう。
2007年については、沿線市町が養老線の固定資産税分(110,230千円)を支援する。
2008年- 2010年にかけて、沿線市町は各年度の赤字額の半分を支援する。ただし、支援額は年間3億円を上限とする。
沿線市町の負担割合は、均等割り50%、各沿線市町の養老線営業キロ割り20%、各沿線市町の養老線駅数割り20%、各沿線市町の人口割り10%を加味して決定する。
沿線市町村とその負担割合、駅数、営業キロは
桑名市 17.54% 5 10.3km
海津市 17.10% 5 15.4km
養老町 13.23% 3 9.0km
大垣市 20.39% 7 12.7km
神戸町 11.66% 3 5.2km
池田町 11.33% 3 4.1km
揖斐川町 8.75% 1 0.8km
近鉄から経営分離され、2007年10月1日、養老鉄道(2代目)となりました。
路線データ
管轄(事業種別):養老鉄道(第二種鉄道事業者)・近畿日本鉄道(第三種鉄道事業者)
路線距離(営業キロ):57.5km
軌間:1067mm
駅数:27駅(起終点駅含む。有人駅8駅・無人駅19駅)
複線区間:なし(全線単線)
電化区間:全線電化(直流1500V)
閉塞方式:自動閉塞式
運転最高速度:65km/h(表定速度:43.7km/h)
西大垣駅に運転区と車庫が併設
今年度2017年度から経営は公有分離方式(上下分離方式)で運行は養老鉄道が行い、線路などの保有、管理は沿線自治体などが出資する第三セクターか一般社団法人が受け持つことになるそうです。近鉄は新法人に鉄道施設、車両を無償譲渡し、鉄道用地を無償貸与します。
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