貨物鉄道博物館の保存車 3 タンク車
今回は、昨日の写真でDB101ディーゼル機関車に連結されていた4両のタンク車について紹介致します。
まず手前のシルバーに塗られたタンク車はタム8000形タム8000です。過酸化水素水専用のアルミ製のタンク車です。
過酸化水素水といえば理科の授業で二酸化マンガンを触媒として酸素の発生、生物の授業ではカタラーゼ反応の活性酸素、そして鉄IIIイオンと反応して、ヒドロキシラジカルの発生(フェントン反応)と工業的にも生物学的にも良く出てくる物質ですが、タンク車で輸送するときも鉄ではなくアルミの缶が使われたのですね。
タム8000形は15t積み二軸貨車で1962年から1965年にかけて8ロット15両が汽車製造、日立製作所、日本車輌製造、および三菱重工業で製造されました。
走り装置は二段リンク式、最高速度は75km/h、台枠は長さ7,000mmもしくは7,400mmの平台枠です。タンク体の長さは6,300mm、内径は1,700mmでタンク内部には補強のため皿形の波除け板が4枚設置されています。
積み込みは液出入管から行い、荷卸しは液出入管と空気加圧による上出し方式で空気管には異物混入除去用のフィルターが内蔵されています。
全長は7,800mm - 8,200mm、全幅は2,530mm、全高は3,615mm、軸距は4,200mm - 4,450mm、自重は9.5t - 10.0t、換算両数は積車2.6、空車1.0、車軸は12t長軸でした。
タム8000号は1962年度、に汽車製造で製造された3両のうちの1両で江戸川化学工業所有となりました。同年度に三菱江戸川化学工業へ改称され、同社向けに9両、安宅産業向けに1両、三徳化学工業向けに2両の計15両が製造されました。1971年12月17日に日本瓦斯化学工業との合併で表記のように三菱瓦斯化学となり、工場の移転で常備駅は南四日市となりました。
1987年に8003を除く14両がJR貨物に継承され、1994年に2両、2003年度に12両が廃車となり形式消滅しました。
積載量15tの塩酸専用タンク車で1938年から1968年にかけて新潟鐵工所、日本車輌製造、汽車製造、日本鋼管、造機車輌、カテツ交通、日立製作所、三菱重工業、近畿車輛、富士重工業、飯野産業、協三工業にて368両が製造されました。さらに1951年12月26日から1963年12月14日にかけてタム100形より8両が三菱重工業、造機車輌、汽車製造にて改造され当形式に編入され、1958年12月2日にはタム3500形より1両が造機車輌にて改造され当形式に編入されました。
全長は7,800、8,100mm、全幅は3,365mm、全高は3,497mm、軸距は3,800 - 4,200mm、自重は10.0 - 11.7t、換算両数は積車2.6、空車1.2、最高運転速度は75km/h、車軸は12t長軸でした。塩酸やアミノ酸を積むため、腐食防止のためタンク内面にゴムライニングが施されています。2005年6月に最後まで活躍した車が廃車となり形式消滅しました。
タム6263号は修復中で下塗り状態でした。
タム500形は1931年から30年間製造された15t積みガソリン専用タンク車で2920号は1958年日本車輌製造製です。2軸タンク車として最多の621両が汽車製造、三菱重工業、新潟鐵工所、東急車輛製造、鉄道車輛工業、飯野重工業、川崎車輛、日本鋼管、富士重工業、日立製作所、日本車輌製造、造機車輌、帝國車輛工業にて製造されました。現在は荷重40tを超えるボギー車が主流ですが、当時はこちらの方が重宝したそうです。
荷役方式は上入れ下出し式で2000年に最後まで活躍したした2両(タム2920, タム2932)が廃車となり形式消滅しました。
主要諸元(タム500形、700形、800形、4000形、9200形)
全長 7,700 mm - 9,300 mm
全幅 2,006 mm、2,408 mm
全高 3,758 mm、3,860 mm、3,870 mm
タンク材質 普通鋼(一般構造用圧延鋼材)
荷重 15 t
実容積 21.2 m3 - 21.5 m3
自重 10.0 t - 11.9 t
換算両数 積車 2.6
換算両数 空車 1.2
走り装置 一段リンク式→二段リンク式
車輪径 860 mm
軸距 3,900 mm - 4,500 mm
最高速度 65 km/h → 75 km/h
タ2000形は1939年に日本曹達15t二硫化炭素専用タンク車タム200形タム274として新潟鐵工所で製造、1941年に10t積アルコール専用のタ2000形に改造タ2001となりました。同じときにタム273がタム2000に改造されています。1961年に日本アルコール販売に移籍、白新線新崎駅を拠点に1995年まで活躍しました。このタンク車は現存する唯一の戦前製タンク車で各部に戦前の設計・構造・工法が見られるそうです。
タンクの大きさが同じなのに積載量が下がっているのは二硫化炭素に較べてアルコールの比重が小さいためです。タ2000形には1951年11月6日、新潟鐵工所にてタム900形(タム972)元は苛性ソーダ専用からアルコール専用に改造がタ2002として加わりました。
全長は7,350mm、7,800mm、全幅は2,300mm、2,430mm、全高は 3,490mm、3,450mm、軸距は3,650mm、3,900mm、実容積は11.5m3、12.1m3、自重は9.6t - 10.7t、換算両数は積車2.2、空車1.0、最高運転速度は75km/h(二段リンク式に改造後)、車軸は12t長軸でした。
1972年7月28日にタ2000が廃車され、1987年4月の国鉄分割民営化時には2両がJR貨物に継承され、1996年にタ2001が廃車になり、1996年4月に最後まで在籍したタ2002が廃車になり形式消滅し、「タ」車(積載重量13t以下のタンク車)の全滅となりました。
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コメント
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B767-281様お早うございます。貨車の保存、とても大切だと思います。どうも機関車や先頭車は保存されますが、その他は顧みられないことが多いようです。矢張り車両は頭から尻尾までで完結するのですから。その意味でも貴重な博物館ですね。昨日は是政線に乗る機会があり、伊豆箱根鉄道塗装車を目撃しました。
投稿: 細井忠邦 | 2017年11月12日 (日) 08時55分
細井忠邦さま、おはようございます。
貨車の世界も産業の発展と共に歴史を刻んでおり、こうやってそれぞれの時代の車両を展示することは極めて重要ですね。
わたしも普段目にしていても形式までは気にしていなかった貨車が奥深いこと、マニアックな研究対象であることはよく分かりました。
ネットでも「新華社通信」ではなく「新貨車通信」というサイトが面白いですね。
投稿: B767-281(クハ415-1901) | 2017年11月13日 (月) 06時07分