横浜市電保存館を訪問 その11 吉村コレクション part3 ディーゼル機関車編
横浜市電保存館の吉村コレクションの話題、今回はディーゼル機関車の話題です。
DD12形
私も中学生の頃、朝日新聞社発刊の「世界の鉄道’70」(特集・ディーゼル機関車)でその存在は知っていましたが、実車は一度も目にすることはありませんでした。太平洋戦争終結後、アメリカ軍を中心とした連合軍が日本に進駐する際に、日本の鉄道は空襲などで壊滅的打撃を受け、軍事輸送に使えないだろうと予想し、持ち込んだ機関車でした。ジェネラル・エレクトリック(GE)社製、標準軌仕様を狭軌仕様に改め、フィリピンの軍用鉄道で使用していた(GE47-TON DROP CAB, No.8584 - 8589)と新造機(GE47-TON DROP CAB,No.8592,8593)の8両で形式はUS ARMY 8500と名乗りました。
実際に進駐してみると日本の鉄道は予想外にしっかりとしており、進駐軍向け輸送は国鉄・私鉄の保有する状態の良い車両を徴用、優先的に整備・運行すること言足りることがわかり、日本への車両持ち込みはこの8両の機関車で終わりました。日本側からしてみると、これまで使用されて来たディーゼル機関車DB10 (入れ換え用・鉄道省設計・1932年、機械式、8両製造)、DC10(入れ換え用・ドイツから1930年に輸入・機械式)、DC11(入れ換え用・ドイツから1929年に輸入・電気式)、DD10 (入れ換え、小列車牽引用・鉄道省設計・1935年・川崎車輌・電気式)に較べ、性能、信頼性において格段に勝っていることから、1956年、アメリカ軍の進駐解除後、国鉄に5両(8585/8586/8588/8592/8593)、名鉄に2両(8584/8589)、八幡製鐵に1両(8587)払い下げられ国鉄ではDD12形、名鉄ではDED8500形、八幡製鐵ではD402と名乗りました。
US ARMY8500の機材13両分が横浜港高島桟橋に到着したのは1946年4月、同年5月に大宮工場で8両が組立られました。高島機関区に配置され、一部は鷹取機関区、呉機関区に転属し、進駐軍貨車の入れ換えに従事しました。運転は国鉄職員が行いました。1951年4月のサンフランシスコ講和条約後もそのまま使用され、1952年3月末付けで米軍機としての取り扱いは廃止となりました。
運転室の前後に発電用エンジン(キャタピラー製D17000型180ps)を1基ずつ配し、発電機(GE製GT555型)で発電、GE製GE733型モーター4基を回す電気式で形態的には模型のように後の国鉄製DD11、DD13、DD51などに較べボンネットが高く、排気筒が短いスタイルでした。入れ換え用のため低速仕様でしたが、軍用車両らしく堅牢で故障しにくく、アメリカ軍の各種車両と互換部品を使用し、極めて整備しやすい車両だったそうです。ただ、台車が小型でモータが低い位置に設置されていたため、大雨などでモーターの冠水による故障の危険性がありました。
国鉄に譲渡された5両は東京機関区に配置、一部は広島第二呉支区に貸し出されましたが、その後、品川機関区、久里浜機関区に配置され、米軍向け燃料輸送貨車の入れ換えに利用されました。1958年以降は大出力のDD13形が導入され、新鶴見機関区に全5両が集結し1972年には全車一斉に第一種休車指定され、1974年に全車廃車・解体となりました。
名鉄に譲渡された2両は小牧基地への貨物線、岐阜基地への引き込み線で使用され、1958年からは築港線で使用されました。名古屋臨海鉄道の開業で役割を終え、1966年にフィリピン国鉄に売却され、1978年12月に2両とも解体されました。
八幡製鐵への1両は八幡~戸畑間の製鉄所専用鉄道で緩急車代用で使用され、1967年3月に解体されました。
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