日立製作所水戸事業所 さつきまつりに初参加 その7 小型地下鉄用リニアモータ台車
日立製作所水戸事業所「さつきまつり」の展示物、今回は昨日の記事で触れた国鉄がヤード継走式貨物輸送を行っていた時代に操車場での貨車の仕分業務を効率化するために開発されたL4形貨車加減速装置のリニアモータシステムから発展した小型地下鉄用リニアモータ台車の紹介です。
従来の地下鉄車両がモータを回転させ、その動力で車輪を回し、レールとの粘着で推進力を得ているのに対し、リニアメトロは誘導電動機の外側のコイル(ステータ)を台車に装荷し、内側の回転子(ロータ)に相当する部分を軌間にリアクションプレートとして敷き、推進力を得る(車上1次リニアモーター方式)方式で、L4カーで実用化されたリニアモータ―方式にヒントを得ており、リニアモーターは最大高さ寸法20cmの極めて薄いものでした。
車軸の下側にある薄型の箱が1次コイル側(ステータ)で、枕木からコの字に固定されているのがアルミ製のリアクションプレート(誘導電動機のロータ)です。
台車全体としては住友金属製になります。
この薄型リニアモータシステムは1973年のオイルショック以降の物価高騰、地下鉄の建設費の高騰で小断面地下鉄構想が提唱された時代に床下のモーター、台車を小型化した車両の開発に大きく貢献しました。さらに御堂筋線の混雑対策として混雑緩和に役立てるためのサブメトロの建設や人口80万から100万人程度の地方中核都市の地下鉄建設に建設費が抑えられる小断面地下鉄の検討とも重なり、リニアメトロ構想が大きく前進しました。
リニアメトロのメリットとしては
1)台車などを小さくできるため、車体を小さく出来、建設費が縮減できる。
2)車輪粘着式の場合、30‰勾配が限界とされていますが、誘導式リニアモーターでは80‰まで対応可能
3)左右の車輪が一本の軸で繋がっている必要がないため、左右の車輪間に回転差を持たせることが可能であり、カーブの曲率に合わせて各車輪がカーブに適応した方向を向くセルフ・ステアリングシステムを採ることが可能で、カーブの曲率を小さくすることが出来る。用地買収などにも有利。
デメリットは
1)誘導式リニアモーターの構造上、漏れ磁束が大きく、1次側と2次側の距離があるので。磁界の強度を保つため大きな電流(励磁電流)が必要となる。
2)従来型の鉄道との相互乗り入れが出来ない。
などが挙げられます。
現在までにリニアメトロ方式で建設された路線は
1990年3月 大阪市営地下鉄鶴見緑地線・京橋~鶴見緑地間
1991年12月 東京都営地下鉄12号線・練馬~光が丘間
1996年12月 大阪市営地下鉄鶴見緑地線・心斎橋~京橋間延伸
1997年8月 大阪市営地下鉄鶴見緑地線・大正~心斎橋間、鶴見緑地~門真南間延伸
1997年12月 東京都営地下鉄12号線・新宿~練馬間延伸
2000年4月 東京都営地下鉄大江戸線・新宿~国立競技場前間延伸
2000年12月 東京都営地下鉄大江戸線・都庁前~国立競技場前間延伸
2001年7月 神戸市営地下鉄海岸線 新長田~三宮・花時計前間
2005年2月 福岡市地下鉄七隈線・橋本~天神間
2006年12月 大阪市営地下鉄今里筋線・井高野~今里間
2008年3月 横浜市営地下鉄グリーンライン・日吉~中山間
2015年12月 仙台市営地下鉄東西線・八木山動物公園~荒井間 で、6都市、7路線です。
大江戸線の場合、建設がバブル経済期と重なり、工期の延伸もあり、最終的な建設費は環状部で約1兆円と通常の地下鉄と大差ない300億円/km以上に膨らんでしまいました。さらに小規模地下鉄であるため、一部区間で混雑が激化しているというデメリットが目立つ結果にもなっています。ただ、小規模地下鉄方式で建設された故に今日、路線が存在するということも忘れてはいけません。
最後まで読んで戴きありがとうございます。
上のリンクをクリックされると面白い鉄道記事満載のブログ村。もしくは鉄道コムに飛ぶことができます。
« 日立製作所水戸事業所 さつきまつりに初参加 その6 リニアモータ方式L4形貨車加減速装置 | トップページ | 日立製作所水戸事業所 さつきまつりに初参加 その8 水戸事業所と常磐線を結ぶ引き込み線 »
「催事」カテゴリの記事
- 青梅線開通130周年、青梅駅駅舎築100年(2024.11.28)
- 通勤電車シリーズ 205系 20 E231系500番台(ヤテ514~516)の山手線への投入による動き(2022.02.21)
- 秩父鉄道の駅 その5 ひろせ野鳥の森駅と広瀬川原駅(貨物駅)(2021.08.31)
- 2021年春、外房線~内房線を巡る旅 その6 蘇我駅で撮影した蒸気機関車牽引列車(2021.06.21)
- 2018年晩夏 長野県内の保存蒸機を見て歩く旅 4 諏訪市湖畔公園に保存されているD51 824号機(2020.09.18)
「地下鉄車両」カテゴリの記事
- 2023年晩夏の関西旅行 大阪メトロ編 その3 堺筋線を走る車両 66系(2024.09.19)
- 2023年晩夏の関西旅行 大阪メトロ編 その2 中央線を走る車両 Part7 近鉄7020系(2024.09.18)
- 2023年晩夏の関西旅行 大阪メトロ編 その2 中央線を走る車両 Part6 近鉄7000系(2024.09.17)
- 2023年晩夏の関西旅行 大阪メトロ編 その2 中央線を走る車両 Part5 400系(2024.09.16)
- 2023年晩夏の関西旅行 大阪メトロ編 その2 中央線を走る車両 Part4 30000A系(2024.09.12)
« 日立製作所水戸事業所 さつきまつりに初参加 その6 リニアモータ方式L4形貨車加減速装置 | トップページ | 日立製作所水戸事業所 さつきまつりに初参加 その8 水戸事業所と常磐線を結ぶ引き込み線 »
コメント