阪急新性能車の系譜 VVVF制御方式 IGBT素子+永久磁石密封式電動機
1990年代になり、インバータ制御方式による車両がJR,大手民間私鉄で導入され、主電動機はかご型三相交流誘導電動機(Induction Motor:IM)となりました。IMは電磁石の固定子の内側に銅の棒が環状に配置された回転子を挿入した構造となっており、固定子に(位相が120度ずつずれた)三相交流を流すことにより、回転磁界が発生、回転子には回転磁界による誘導電流が発生し、磁界の動きに合わせて回転が起こります。三相交流の周波数と回転数が対応しているため、周波数を上げると回転速度は速くなります。交流誘導電動機の直流モータに対する優位性は、構造が簡単であること、ブラシを持たないため摩耗する部品がないこと、メンテナンス性に優れており、高速運転にも対応可能なことなどが挙げられます。
登場から20年以上が経過し、かご型三相交流誘導電動機はVVVF制御との組み合わせにおいて成熟した技術となりました。これを今後如何に省エネルギー化・メンテナンスフリー化するかということで開発されたのが永久磁石同期電動機(Permanent Magnet Synchronous Motor:PMSM) です。PMSMにおいては回転子内部に永久磁石が埋め込まれています。IMでは回転子に電流が流れるため電気抵抗により発熱し、エネルギー損失が見込まれました。PMSMでは回転子が永久磁石であるため電流は流れずエネルギー損失が殆どないそうです。
電流が流れないことにより、モータの冷却は密閉した状態のみで空気を循環させることで可能となり、外枠に走行風を当てる冷却方式が可能となりました。IMで必須だった軸直結の冷却ファンは不要となり、風切り音による騒音も減少しました。
永久磁石はネオジム-鉄-ホウ素を組み合わせた希土類磁石で磁力が大変強く、完全密封構造になっているので内部にホコリなどは入らず、PMSMは製造されてから廃棄させるまでの間、分解せずに使用することが可能となりました。
PMSMは固定子の回転磁界の位置と回転子の位置が完全に一致しないと正常に回転できないため、1個の制御器で1台のモータを制御する必要があります。そのために制御器の台数が増えてしまうので制御器の冷却器を2台で1台とするなどの対策が取られています。また回転子が永久磁石であるため、惰行中は発電機となるため、ブレーキがかかってしまうので、モータのトルクが0になるように電流を流し続ける必要があります。高速走行時はモータの発電電圧がインバータの供給力を上回り、それ以上加速することができなくなるのを防止するため、回転子の磁力を打ち消す「弱め磁束制御」機能も備わっています。万が一、インバータトラブルが発生した際にモータから逆流した電気がインバータ素子を破壊しないようにモータとインバータの間に電気的に分離させるためのスイッチも挿入されています。
永久磁石故に複雑になる部分はあるものの、それを上回る省エネ、省メンテナンス効果が期待されているのがPMSMです。
阪急電車では2013年から営業を開始した1000系II(神宝線用)1300系II(京都線用)に190kW、定格回転数2,000 rpmの全閉自冷式永久磁石同期電動機(PMSM)が採用されました。
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