2018年晩夏 長野県内の保存蒸機を見て歩く旅 8 諏訪湖畔のD51 349号機
C12171号機の保存されていた下諏訪町役場から諏訪湖方面を目指し、15分ほど歩いた岡谷市総合福祉センター諏訪湖ハイツの敷地内にD51349号機は保存されています。
2018/8/31
この機関車は煙突の形からもわかりますが、オーストリアのウィーン工科大学教授、アドルフ・ギースル・ギースリンゲンが開発した石炭の燃焼効率を上げるための燃焼補助装置、ギースル・エジェクターを装備した機関車です。しかも349号機は357号機とともに最初に装備された機関車です。
ギースル・エジェクターは煙室内に一列に設置された特殊なブラスト管(蒸気排出管)と上から見ると長円形、サイドから見ると逆台形の煙突からなっており、シリンダから排出された蒸気をブラスト管から排出する際に、通気量(機関車が力行中かアイドリング状態かなどによって変化)によって吹き出す面積を変化・調整し、効率よく排出し、ボイラー内の煙管(大煙管と小煙管)を通る石炭の燃焼ガスの比率を変化させ、従来の円筒形煙突に較べて、燃焼効率を高め、消費する石炭の量を減らし、火の粉を減らす効果を出した装置でした。実験では9~15%程の石炭の節約、シンダや火の粉の減少が確認されました。
国鉄ではD51形式に対応したギースル・エジェクターをオーストリアから輸入し、1963年3月に長野工場で当時、上諏訪機関区に配属されていた349号機に試験的に装備m中央本線で試運転を行いました。同時期に盛岡機関区所属の357号機にも郡山工場にて装備しました。試験の結果、効果が認められたため、日本国内では製造ライセンスを取得した理研金属工業が製造した製品がD51形34両に装備されました。
117[追]、120[追]、167[旭]、226[追]、232[秋]、241[追]、252[旭]、276[秋]、285[追]、293[追]、308[追]、315[秋]、328[岩]、
343[追]、345[追]、349[追]、357[追]、371[秋]、391[秋]、413[追]、457[秋]、492[追]、509[追]、539[追]、570[秋]、605[追]、
711[追]、725[秋]、733[追]、742[追]、842[追]、952[旭]、953[旭]、1037[岩]、1042[追]、1119[追]
※ [旭]:旭川機関区 [岩]:岩見沢第一機関区 [追]:追分機関区 [秋]:秋田機関区
単機で1200tの運炭列車運用を持っていた追分機関区のD51に重点的に装備されたほか、秋田機関区では結果的に8両のD51に装備されていますが、これは廃車された機関車から引き継がれたケースも含まれています。315号機は九州に転属後、通常の煙突に戻されています。232号機はギースル・エジェクター装備後、秋田から青森という履歴を辿っていますが、保存機は通常煙突が付いています。
私も現役時代に追分機関区所属機の241号機、953号機、1119号機に遭遇しており、保存機では232号機(通常煙突)大森山公園、842号機 水島中央公園、1119号機 森の里若宮公園を見学しています。
沖田祐作氏の機関車表データによる履歴は
D51349 日立製作所笠戸工場=1228 1940-02-15 S77.60t1D1T(1067)
車歴;1940-02-15製造→納入;国鉄;D51349→
1940-02-15竣工→配属;名古屋局→
1940-02-24配置[名鉄達第144号];敦賀→
1944-06-15借入;米原→
1944-08-16返却→
1954-03-24集煙装置取付→
1957-10-13上諏訪→
1958-05-22借入;松本→
1958-07-10返却→
1958-10-27借入;木曽福島→
1958-11-01返却→
1959-01-17借入;長野→
1959-02-28返却→
1963-03-08長野工場にてギーゼルエゼクター取付(取付第一号)→
1963-03-15~24日まで試験実施(以後10月迄中央東線にて長期試験実施)→
1964-06-10小樽築港→
1964-09-12耐寒工事施工→1966-05-01追分→
1967-02-04旋回窓取付(左側)→
1976-03-19廃車[工車第1224号];追分→
保存;長野県岡谷市「勤労福祉センター諏訪湖ハイツ」;D51349
この機関車の形態的特徴は
晩年の北海道配置でデフレクターは切り詰めタイプとなっていること。
機関助手側ランボード先端付近の潤滑油バルブはカバーがかけられ、露出していないこと
逆転器リンクプレートの穴は大穴タイプ
砂管は 日立製作所製造機のこれまで見たタイプと比較すると
1936年度 (6両):43 - 48(製造番号813 - 818)
1937年度 (3両):D51 68 - 70(製造番号868 - 870)68号機 小岩井農場 70号機 さくら交通公園
1938年度 (27両):D51 121 - 133・173 - 186(製造番号990 - 1002・1040 - 1053)123号機 船橋郷土資料館
1939年度 (50両):D51 310 - 359(製造番号1189 - 1237・1240)320号機現役時代
1940年度 (43両):D51 360 - 378・589 - 612(製造番号1238・1242・1239・1241・1243・1244・1246・1245・1247 - 1257・1420 - 1431・1434・1433・1432・1435 - 1443)367号機現役時代 370号機 土崎街区公園 612号機現役時代
1941年度 (18両):D51 642 - 659(製造番号1460 - 1477)
1942年度 (33両):D51 695 - 727(製造番号1669 - 1668・1679 - 1691)706号機現役時代 724号機渋川駅前
1943年度 (13両):D51 876 - 888(製造番号1814 - 1826)885号機深谷市仙元山公園
1944年度 (19両):D51 889 - 895・1051 - 1062(製造番号1827 - 1837・1886 - 1888・1890・1889・1891 - 1893)895号機王寺駅そば
赤で示した各年度の製造機とほぼ共通した砂管パターン(斜め富士山タイプ)をしていることが分かります。
助手席側ランボードキャブ側に潅水清浄装置の搭載はありません。
炭水車は8-20Bで軸ばねに重ね板ばねを用い、側枠を鋲接板台枠構造としています。
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