2018年晩夏 長野県内の保存蒸機を見て歩く旅 40 トレインギャラリー駐車場に保存される長野電鉄2500系
「信州十割そば処 レストラン トレインギャラリーNAGANO」にて昼食の信州そばを堪能した後は、駐車場に保存される長野電鉄2500系をじっくりと見学しました。
2018/9/1
この車両は言わずと知れた元東急5000系初代で、私も高校時代の1971年4月から1974年3月は東横線を利用していましたので毎日お世話になっておりました。地方私鉄に譲渡された東急5000系初代に遭遇するのは、熊本電鉄5000形に続き2度目ですが、高校時代に東横線で活躍する5000系初代の写真を撮っていなかったことは今でも悔やまれます。
保存されているのはC10編成 モハ2510+クハ2560で東急ではデハ5015、デハ5016だった車両です。譲渡の際にデハ5016は電装解除改造されました。
以下の記述にあるように通過標識灯が尾灯となり、オリジナルの尾灯が撤去され、ジャンパ栓が増設されています。
初代5000系は1954年から1959年にかけ、東急車輛製造において105両、内訳は
デハ5000形式 制御電動車 5001-5055
デハ5100形式 中間電動車 5101-5120
クハ5150形式 制御車 5151-5155
サハ5350形式 付随車 5351-5375 製造当初はサハ5051-5075としてデハ5000形に挟まれ3両編成でしたが、1959年にデハ5000形5051-5055が製造され、番号重複が起こるため、同年8月1日付でサハ5350形に改番されました。
が製造され、3~6両の編成で1954年10月16日から1986年6月18日までの32年弱に渡り、運用されました。
湘南スタイルの正面2枚窓、航空機のモノコック構造を応用した超軽量構造で下膨れの愛嬌ある車体から「青ガエル」の愛称で親しまれました。丸みの強い車体形状は通常の電車に較べ、断面積が小さく、混雑時の詰め込みに適さないことや冷房化などによる大規模な設備の改修に向かないこと、部分的な荷重や応力に弱いことなどで鉄道車両にはあまり普及せず、準張殻(セミ・モノコック)構造の車両が多用されるようになりました。
直角カルダン特有の構造が見えます。
我が国で初めて本格導入された直角カルダン駆動方式でインダイレクト方式の揺れ枕にボルスタアンカを併用したTS-301台車を履き、その重量は1基あたり4500kgと軽量でした。主電動機は定格速度の高い東芝製SE-518形直巻きタイプ(定格出力110kW、端子電圧750V、電流162A、定格回転数2,000rpm、最高許容回転数4,500rpm、最弱め界磁率50%)が採用されので高速性能が確保されました。起動加速度はMT比2M1Tで2.7km/h/s、1M方式の電動車のため、MT比を自在に変えることができました。PE-11形電動カム軸式抵抗制御器は、直列12段、並列11段、弱め界磁3段、発電制動20段で後に国鉄のCS12形制御器のモデルとなり、さらに改良されて国鉄の電車用抵抗制御器の決定版となるCS15形へと発展しました。
制動には発電制動併用自動空気制動が採用され、発電ブレーキ抵抗器の冷却風を客室内に導き、温風として暖房に使用する設計が取り入れられました。尤もこの方式は動き出した当初はなかなか温まらないため、後年、通常の電熱式に改造されました。
東横線時代から印象的だったTS-301形台車
主要諸元
車両定員 先頭車140(座席58)人 中間150(座席64)人
自重 デハ5000形 (Mc) 26.6 t デハ5100形 (M) 27.0 t サハ5050形 (T) 20.0 t クハ5150形 (Tc) 21.5 t
全長 18,500 mm
車体長 18,000 mm
全幅 2,740 mm
車体幅 2,700 mm
全高 4,120 mm
車体高 3,640 mm
台車 TS-301
主電動機 SE-518形
主電動機出力 110 kW(端子電圧750V)
駆動方式 直角カルダン駆動方式
歯車比 52:9 (5.78)
制御方式 電動カム軸式抵抗制御
制御装置 東芝PE-11形(弱め界磁起動1段、直列12段、渡り2段、並列11段、弱め界磁3段、発電制動20段)
制動装置 AMCD、手ブレーキ 発電併用自動空気ブレーキ
保安装置 東急形ATS
5000系と5200系は主抵抗器はカバーで覆われ、MGに取り付けられたファンで冷却する強制風冷式が採用されました。
長野電鉄は1981年の長野線長野~善光寺下間の地下化に対応し、A-A基準(1969年5月15日付通達の地下線を運転する車両、地下鉄線に乗り入れ運転する車両に対する火災対策基準、実際には後述のように、大都市およびその周辺の線区で長大トンネルのある区間を運転する車両に対するA基準が適用されました。)に適合する車両が大量に必要となり、1977年から東急5000系の導入を進めました。東急側は3000系初代を譲渡する方針でしたが、長野電鉄の強い要請、東急百貨店(長野県経済の要衝でした)の口添えもあり、5000系の譲渡となりました。1977年1月25日に借入扱いでモハ2601+クハ2551(デハ5036+クハ5155)が入線し、試運転や乗務実習が繰り返され、同年2月9日から営業運転に入りました。
導入に際して長津田車両工場にて以下の改造が施されました。
・出力増強改造:信州中野 - 湯田中間の連続勾配区間に対応するため、2両編成については主電動機を東芝SE-626(定格出力115kW)に交換。3両編成については元来搭載する東芝SE-518の磁気容量拡大により対応。
・電動発電機 (MG) と蓄電池を制御車・付随車に移設。固定編成化
・A基準適合改造
・ワイパー増設。
・2両編成へのジャンパ線増設。
・尾灯を移設。東急時代は窓下に尾灯、窓上に通過標識灯を配していましたが、譲渡改造時に通過標識灯を廃止し尾灯を窓上に移設。
・耐寒耐雪工事改造
・警笛を移設、前面窓下にふた付きのものを設置。
・通風器を押し込み式に取替え。ドアレールヒーターを設置。戸袋を密閉式へ改造。
・乗務員室を200㎜拡張し、仕切り扉を中央へ移設。
・台車を改造することで床面を30㎜下げて、床面高さを1140㎜に変更。
最終的に2両編成2500系10本(モハ2500形クハ2500形C編成)、3両編成2600系(モハ2600形サハ2650形T編成)3本の計29両が譲渡されました。
クハ2500形についてはオリジナルのクハ5150形が5両しかなかったので、デハ5000形を5両、電装解除・制御車化改造を施し、対応しました。塗装は写真のように従来車に準じたファーストレッド(国鉄赤2号と同色)とストロクリーム(国鉄クリーム4号と同色)のツートンカラーに塗り替えられ、「赤ガエル」の愛称で親しまれました。1991年頃に塗り分けが変更され上部の赤帯が前面まで回るようになりました。
1980年代から1990年代にかけて長野電鉄の主力車として運用されてきましたが、1980年代から1990年代にかけて長野電鉄の主力車として運用されてきたが、1998年の長野オリンピック輸送に向けた車両保守の合理化を目的に、1993年から帝都高速度交通営団日比谷線用の3000系(3500系)への置き換えが始まり、1998年までに全車廃車となりました。
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