2018年晩夏 長野県内の保存蒸機を見て歩く旅 108 軽井沢駅に保存される車両たち その2 10000形’EC40形)電機
4月9日の記事にあるように、横川~軽井沢間は1893年4月1日に開業しましたが、当初は非電化でした。同区間にはトンネルが26か所存在し、運転速度も低く、乗務員や乗客は蒸気機関車からの煤煙に苦しめられていました。一酸化炭素中毒事故も発生したため、煙突の形状を工夫して、煤煙を後方に導く努力もされましたが、望ましい効果は上がりませんでした。解決策として同区間を電化し、労働環境改善と輸送力増加を図ることとしました。

2018/9/2 軽井沢駅
1912年5月11日、同区間の電化開業用にドイツAEG(Allgemeine Elektricitäts-Gesellschaft)社に発注され12両が輸入されたのが10000形(後の1928年の車両称号規程改正でEC40形)です。電気関係をAEG、機械関係をエスリンゲン機械工場が担当し、1911年に製造されました。本形式の導入により、横川~軽井沢間の所要時間は蒸機時代の75分から49分に短縮され、1列車あたりの輸送力も若干増加しました。
主要諸元
軸配置 Czz
軌間 1067 mm (狭軌)
電気方式 直流600V (第三軌条方式・架空電車線方式併用)
全長 9660【9550】 mm 【】内は最終時点での数値 以下同じ
全幅 2950 mm(集電靴中心間)
車体幅 2600 mm
全高 3615【4200】 mm
運転整備重量 46.00 t
動輪径 900 mm(動輪新品時)802 mm(歯輪有効径)
軸重 16.38/16.98/13.53 t(第1/2/3軸)
動力伝達方式 歯車1段減速、連結棒式(動輪・歯輪とも)
主電動機 直流直巻電動機 MT3 × 2基
主電動機出力 210 kW (1時間定格)
歯車比 動輪:6.50 (14:91)
歯輪:5.86 (15:88)
制御方式 抵抗制御
制御装置 電磁単位スイッチ式制御器
制動装置 真空ブレーキ【EL-14B自動空気ブレーキ】
発電ブレーキ・手用動輪用ブレーキ・手用ラック歯車用帯ブレーキ
最高運転速度 25.0 km/h (18.0 km/h)
定格速度 14.21 km/h
定格出力 210 kW (420 kW)
定格引張力 53.9 kN(107.8kN)
車体は短いボンネット(機器室)を有する凸型で、当初、運転台は両側に設けられていましたが、1914年に軽井沢方の運転台は撤去され、主電動機送風機が設置され横川側のみの片運転台方式となりました。
配置は横川機関区で、横川~軽井沢間、限定運用され、1911年11月からAEG・エスレンゲン両社の技術者の指導の下、試運転が実施され、1912年5月から貨物列車の一部、7月から旅客列車の一部を担当するようになりました。編成の勾配の山麓側と中間に1両ずつ連結され運用されました。1915年8月からは山麓側に2両、中間に1両連結し,200t列車の運行が開始されました。1925年には、山麓側に2両、中間に2両連結で300t列車の運行も開始されました。1931年には自動空気ブレーキの導入等により、横川方3両、軽井沢方1両により320t列車の運行も始まりました。
1918年3月7日には熊ノ平駅で列車脱線事故が発生し、10004、10009の2両が被災しましたが、修復されました。1931年、老朽化で故障が多発するようになり、後継機として設計されED42形に代替されることになり、まず12号機が1931年5月に廃車、1936年4月には残る全車が廃車となりました。
廃車後は大宮工場に保管されていましたが、1941年にEC40 1,2,1942年に3,4が京福電気鉄道に譲渡されることとなり、1,2号機はテキ511形511・512となり、越前本線や三国芦原線で使用されました。3,4号機は部品取りに使用され解体されました。1964年2月17日、511は国鉄で復元保存されるため、京福での勤めを終え、国鉄に変換されました。国鉄からは代替機としてED28 11号機が譲渡され、テキ531形531となりました。
返還後、大宮工場で明治時代の姿に復元され、鉄道記念物に指定、10000として旧軽井沢駅舎記念館に静態保存されました。
2021/4/3 軽井沢駅 しなの鉄道に乗車前にホームから
特徴的な動輪3個とロッド構造も分かります。
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