秩父鉄道の車両たち その12 電機 デキ1形6,7号機と同型(デッカー形電機)の東武鉄道ED10形
秩父鉄道では1925年、秩父セメント秩父工場の操業開始に合わせてイギリス・イングリッシュ・エレクトリック(車体・台車はノース・ロコモティブ社)社製のデッキ付き箱型B-B機を2機導入しました。これが同社ではデキ1形デキ6,7号機となりました。
車体は正面も側面も左右非対称の形態で制御装置は電動カム軸式、主電動機はデッカー製149.2kW(600V)×4、ブレーキはEL-14A空気ブレーキと手ブレーキを併用、台車はデッキと一体の板台枠台車を履きました。当初はパンタグラフも2基搭載していました。塗装は登場以来廃車まで茶色一色でした。戦時中にパンタグラフは1基に減らされ、1952年の昇圧で主抵抗器の結線変更がなされ、主電動機出力は186kW(750V)x4に増強されました。
昨日のデキ1-5とは異なり、登場以来、配線や補機変更などの機器更新が行われなかったため、老朽化が進み、1976年にさよなら運転、1977年1月10日付けで廃車となりました。
東武博物館に保存展示されているED10形101号は伊勢崎線の電化、日光線の全線電化開業で導入された東武鉄道初の電気機関車でした。デッキは台車側に設置され、板台枠台車と一体構造になっています。車体が左右非対称なのは車体中央機械室が中央通路を挟み、主抵抗器と主制御器・空気圧縮機・電動発電機を配置したことに依るものです。
主要諸元
全長 10,900 mm
全幅 2,610 mm
全高 3,945 mm
運転整備重量 50.8t
台車 板台枠式
動力伝達方式 1段歯車減速吊り掛け駆動
主電動機 DK-98B
主電動機出力 149 kW
歯車比 5.33 (80:15)
制御方式 非重連、2段組合せ、弱界磁制御)
制御装置 電動カム軸式CS-10
制動装置 EL14A空気ブレーキ、手ブレーキ
定格出力 596 kW
定格引張力 7,120 kg
元々は別の鉄道事業者が購入予定だったものを注文が流れ、東武鉄道が購入したもので1930年5月に入籍しています。1944年3月1日の総武鉄道との合併以前は東武鉄道にとって唯一の電気機関車でした。1955年7月の改番でED4000形ED4001となり、1970年代には貨物輸送量の減少などで運用から遠のき、1972年6月22日、除籍となり、近江鉄道に譲渡されました。
近江鉄道へは1972年7月に譲渡、1973年1月に入籍、塗装は近江鉄道電機の標準色青灰色になり、主要機器の大半が国産品に換装されました。最初は多賀町のビール工場からの貨物輸送を担当、1984年10月30日、ビール輸送が廃止になると彦根駅や住友セメント彦根工場構内の入換を担当、1986年3月末、彦根工場の鉄道輸送の全廃で用途を失い、休車、2004年7月1日付で廃車となりました。2007年に「近江鉄道ミュージアム」が開設され、再塗装、展示され、2009年東武博物館の改装で本形式を展示することになり、東武へ返還され、ED10に戻され、塗装も茶色一色となりました。
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