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2022年5月 2日 (月)

小田急ロマンスカー 50000形VSEの定期運用からの引退

2022年3月のダイヤ改正における残念な出来事の一つは、2005年3月にデビューし、小田急ロマンスカーの原点、前面展望を復活させた50000形ロマンスカーVSE"Vault Super Express"が17年間の定期運用から引退したことでした。この衝撃的なニュースは2021年12月17日に発表となりました。

50000-vse-091004-3_20220501092501 2009/10/4 千歳船橋

1990年代、バブル崩壊後の景気低迷や旅行形態の変化、レジャーの多様化で小田急の看板である箱根特急の利用者数は年間5%程度の減少傾向が続きました。こういった状況に対応するため当時、老朽化が進んでいた3100形NSE車の置き換え用として投入されたのが30000形EXE車でした。30000形は小田急特急の日常的利用を増加させることを主眼に開発・導入された系列でそれまでのロマンスカーの特徴だった前面展望席を廃止し、連接車体構造も採用しませんでした。
30000形の導入により、特急利用者数は1987年の1100万人から2003年の1400万人へと増大傾向になりましたが、箱根特急の利用者数は同年比で550万人から300万人へと大幅な減少とないました。2001年にアンケート調査を行った結果、ロマンスカー利用を検討したいと回答した人々の多くが展望席の復活を希望しており、展望席がなくなったために別の交通機関に転移した利用者が多いことが判明しました。
2000年に交通バリアフリー法が制定され、大規模な車体更新を行う際にはバリアフリー化が義務付けられ、更新検討時期に入っていた10000形HiSE車は高床構造であるためバリアフリー対応が困難とみなされ、HiSE車に替わる新しい特急車両、しかもロマンスカーの原点に立ち返り、展望席と連接構造を持ち、利用者にときめきを与える車両というコンセプトで岡部憲明氏が率いる「岡部憲明アーキテクチャーネットワーク」
にデザインを依頼、日本車輛製造が製作し、10両編成2編成が製造され、2005年3月19日のダイヤ改正から営業運転が開始されました。

50000-vse-091010-3_20220501092601
2009/10/10 千歳船橋

運用開始以来、平日5往復、休日6往復の固定運用が組まれ、箱根観光特急専用車両として「はこね」「スーパーはこね」のみに投入され「さがみ」「えのしま」への投入はありませんでした。同時期に活躍していた7000形LSE車や10000形HiSE車に不具合が見つかった際の応急対応としてホームウエイ75号として多摩線に入選したり、2016年3月のダイヤ改正以降、平日の江ノ島線系統のホームウエイ85号に投入されることもありました。

登場から15年以上過ぎ、更新時期に差し掛かると、アルミ合金押出形材によるダブルスキン構造の車体は溶接などの熱を加えての補修や修正が非常に困難であり、修理に高度な技術が必要なこと、連接構造や車体傾斜制御などに特殊な構造を多く採用しており、経年劣化に伴う主要機器の更新が難しく、性能を維持できないことなどから、EXE車とは異なり更新工事は行わないことが決定し、早期引退となりました。2022年3月改正を以って定期運用から引退し、臨時ダイヤ等によるイベント列車での使用を経て2023年秋頃には完全引退となるとのことです。

長引くコロナ禍で鉄道会社としては特別感のあるロマンスカーよりは通勤利用、日常利用の特急を優先し、利益の確保を優先した結果、こういう方向へのシフトになったのでしょうか。2016年3月の飲食のシートサービスの終了、2021年3月の車内販売終了なども同じ方向化と感じます。2022年3月のダイヤ改正における特急ロマンスカーの運行体制は朝の特急「モーニングウェイ」を3本増発、平日の新宿~箱根湯本間「はこね」「スーパーはこね」を上下45本から30本に減少、土休日は51本から39本に、一方で小田原までの「さがみ」は大幅に増やされました。

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コメント

B767−281様 今晩は。VSEは2回乗っていますが、木の温もりを感じさせる内装や少し外向きの角度になっている座席などなかなか良いつくりで好きな車両です。短編成化してでも良いのでどこか買い取る鉄道会社は出てきませんかね。期待しています。ところで千歳船橋駅、世田谷勤務の時度々利用したので懐かしいです。下り方向にちょうど富士山が望めるのも良いです。

細井忠邦さま、おはようございます。

いつまで続くのかわからないコロナ禍になか鉄道会社の旅客サービスも徐々に悪化の気配が感じられる昨今ですが、VSEを登場させたときの精神を受け継ぐ会社が現れてくれると良いですね。

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