世界で一番多い保有数を誇ったJALのBoeing747 その13 低燃費・高出力のJT9D-7Qエンジン搭載初号機 JA8130
cn21679/ln376として1979年5月31日に初飛行したJA8130、同年6月15日に引き渡されました。導入当初はアメリカ西海岸線に投入され、エコノミークラスの座席はそれまでの横9席から10席となり、391席仕様となりました。
エンジンはJT9D-7Aの水噴射オプションを廃止し、推力を21.2tから24.0tに増大させたJT9D-7Qになりました。JALの747の場合、1970年導入時はJT9D-3A型(推力19.7t)が装着されており、1973年までにJT9D-7型(推力20.6t)に改修、さらに1977年までにJT9D-7A型に改修されましたが、JA8130からの国際線タイプは最初からJT9D-7Q型となりました。このエンジンの改良に貢献したのが高圧タービン静翼と動翼の耐熱素材、クーリング方式、コーティング、結晶構造の改良でした。
高圧タービン1段目静翼(NGV1)に関して、JT9D-3や-3Aではコバルト基耐熱合金のWI-52が使用されていましたが、耐用時間が短く使用開始から500時間、もしくは1000時間で熱による破損が多発しました(第一・二世代NGV1)。JT9D-7/-7Aでは同じコバルト基合金のMAR-M509を採用し、使用時間は5000時間になりました(第三世代NGV1)。さらなる改良が加えられ、フィルム冷却孔が追加されたことで熱損が抑えられ使用時間は10,000時間になりました(第四世代NGV1)。
一方、高圧タービン1段目動翼(HPT1)について見てみるとJT9D-3/-3Aではニッケル基耐熱合金Udimet700を普通鋳造したブレードが使用されていたため、クリープや熱疲労により結晶間の隙間からクラックが発生し、ブレードの破断が多発、寿命は500~1000時間程度でした。JT9D-7/-7Aでは材質をB1900+Hfに変更し、内部クーリング方式も改良し、寿命は5000時間となりました。JT9D-7J/-7Fでは素材をMAR-M200+Hfにし、結晶構造を一方向凝固(DS)にしたこと、さらにNGV1同様にブレード前縁にフィルム冷却孔を採用し、耐久性の大幅な上昇、燃焼ガス温度の上昇に成功しました。
JT9D-7Aから-7Qへの変化はフィルム冷却の強化がなされ、ファンブレードを1inch大きくし、圧縮機を一段追加し、高圧縮化でした。やがて高強度、耐熱性超合金は単結晶技術の確立で、JT9Dエンジン系列の最高峰と言われるJT9D-7R4G2エンジンの開発に繋がります。
JT9D-7Qエンジンの効果は最大離陸重量では80t近い増加となり、1984年12月に成田~ロサンゼルス~リオデジャネイロ線開設に繋がりました。フライトは約24時間になりました。冬場の偏西風が強い時期、アメリカ西海岸から日本までのフライト、フルペイロードでは厳しいこともありましたが、-7Qエンジンからはその問題も解消しました。またDC-8の時代はロサンゼルス~リオデジャネイロ間でマイアミ給油が必要でしたが、-7Qエンジンでは直行が可能となりました。
日航財団が参画した高高度大気観測プロジェクトのデータサンプリング機としてオーストラリア線でも活躍したため、成田では早朝と夕刻しか見ることのできない機体でもありました。
2004年5月にはJALからJAAに移籍、2005年10月まで在籍し、2005年10月18日、カリッタ・エアーに売却、2008年4月にはリタイア、解体となりました。
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