JR九州初の振り子式電車883系 その1 2005年のリニューアル前まで
JR九州の電車特急シリーズ、783系、787系に続き、博多~大分間の特急「ソニックにちりん」用に1995年4月20日のダイヤ改正から投入されたのが883系でした。
2005/12/6 スペースワールド AO1編成
2003/7/12 香椎 AO2編成 これらは1次車で前照灯は5か所点灯します。
2004/10/18 下曽根 AO3編成 2次車、これ以降は前照灯の点灯は4か所にパネルはルーバー状に
特急「つばめ」の名称復活に合わせ、グレーツートンの荘重なイメージで登場した787系とは打って変わり、無塗装のステンレスボディにSONICと大きな文字をあしらい、車内の腰掛には大きな耳型ヘッドレストを装備するなど話題性に富んだ車両となりました。
車両デザインは水戸岡鋭治が手掛け、製造は日立製作所が担当しました。1994年から2008年にかけ7両編成8本、計56両が製造されました。1995年10月1日にグッドデザイン商品に選定、1996年5月31日にブルーリボン賞、6月21日にブルネル賞長距離部門大賞を受賞しました。
主要諸元
最高運転速度 130 km/h(曲線通過 +30 km/h)
設計最高速度 130 km/h
起動加速度 2.2 km/h/s
編成定員 334/342人(普)+15人(グ)=349/357人
編成重量 264.3 t 188.6t
全長 21,700 mm (20,500 mm)
全幅 2,850 mm
全高 3,580 mm
車体 ステンレス (前頭部のみ普通鋼)
主電動機 かご形三相誘導電動機
駆動方式 TD継手式中実軸平行カルダン駆動方式
編成出力 190 kW×12= 2,280 kW
190 kW×8= 1,520 kW
制御方式 GTO素子VVVFインバータ制御 IGBT素子VVVFインバータ制御(1000番台)
制御装置 東芝製PC401K
制動装置 発電ブレーキ、電気指令式ブレーキ
保安装置 ATS-SK、ATS-DK
1995年当時、鉄道のライバルである高速道路網は大分自動車が全線開通を目前に控えていましたが、日豊本線は曲線が多く、また同線に運用されていた485系はかなり老朽化も進み、メンテナンスも行き届いていない状態となっていました。こういった状況を打破し、高速バスとの競争に打ち勝つためにまず振り子式を採用し、スピードアップすること、そして奇抜なデザインにより話題性を獲得することを重要視し、787系「つばめ」プロジェクトで成功していた水戸岡氏にデザインを依頼、787系では抑えられていた色彩から一転し、赤・青・黄・緑などの原色を用いたポップカルチャーが取り込まれた車両として883系が登場しました。
車体は軽量ステンレス製、前頭部は非貫通構造の鋼鉄製で水戸岡はイタリアのデザイナー・マルチェロ・ガンディーニがデザインしたトラックを参考に883系の顔をデザインし、ブルーメタリックに塗装しました。また前頭部には別パーツのパネルが装着されており、当初は編成ごとにパネルの形状や色が異なりました。
783系は1M方式、787系はMM'(奇数・偶数の関係は通常とは逆)方式だったのに対して883系はM-TA方式、制御電動車のクモハまたは中間電動車のモハと交流用機器とパンタグラフを積む付随車のサハの2両で1つのユニットを組む方式としました。
列車内は「つながった街並としての車両を作っていきたい」という水戸岡の発想から、2・4号車の車端部に設置されているコモンスペースは「公園」、デッキは「人の集まる広場」と位置付けられ、車内の仕切りにはガラスが用いられ、2時間の短距離輸送なのでビュッフェは設置されませんでしたが、コモンスペースが設置され、車販の拠点となるクルーズルームも設けられました。
機器回路の構成は813系に準じており、制御方式はサイリスタ位相制御と東芝製GTO素子によるVVVFインバータ制御で1C4M方式となりました。
2002/3/15 博多 AO4編成 第3次車はフェンダーミラーが黄色に、連結器カバー、ワイパーカバーが赤色に塗装されました。
2005/12/8 香椎 AO5編成 リニューアル後の写真
1994年8月にクモハ883-1~2、モハ883-101,102,201,202、サハ883-1,2,101,102,201,202、クロハ882-1,2の4形式14両(第1次車)、1995年2月に クモハ883-3、モハ883-103,203、サハ883-3,103,203、クロハ882-3の7両(第2次車)が大分運転所に新製配置、ThscTMTMTMc7両編成3本に組成され、1995年4月20日のダイヤ改正から「ソニックにちりん」4往復に投入されました。
クモハ883には主電動機と制御装置が搭載され定員は48名。
モハ883,100番台は5号車で定員56名。
モハ883,200番台はクルーズルームがあり、定員44名。
サハ883、パンタグラフ、交流関係機器、補助電源装置、CPを搭載し、0番台は6号車で乗務員室があり、定員56名、100番台は4号車でコモンスペース設置、定員56名。200番台は2号車でコモンスペース(AO1~5編成では携帯電話スペース)を設置、定員56名。
クロハ882、補助電源装置を搭載した半室グリーン車で車体中央にデッキと乗降扉があり、定員15+18名。
1996年2月にはクモハ883-4,5、モハ883-104,105,204,205、サハ883-4,5,104,105,204,205、クロハ882-4,5(第3次車)が増備され、7両編成5本となり、「ソニックにちりん」9往復に投入されました。
2005/12/9 西小倉 AO6編成 リニューアル後
2005/12/8 香椎 AO7編成
2005/12/6 海老津 AO8編成 リニューアル後
1997年2月にもクモハ883-6~8、モハ883-206~208、サハ883-6~8,206~208、クロハ882-6~8(第4次車)が増備され、5両編成ThscTMTMcが同年3月22日のダイヤ改正では名称変更された「ソニック」6往復に投入されました。
2002年4月1日時点の大分運輸センター配置883系編成表 大分運輸センターは1999年12月1日に大分電車区から名称変更
当時、同センターには883系の他、485系が14両、815系が18両、717系が2両、457系が27両、415系が24両配置されていました。
以後、ダイヤ改正毎に「ソニック」が増発されてゆき、1999年3月13日の改正では7連による9往復、5連による7往復、2000年3月11日のダイヤ改正では7連による11往復、5連による7往復、2001年3月3日の改正では7連による11往復、5連による8往復、2005年3月1日改正では7連による12往復、5連による8往復、2008年3月15日のダイヤ改正では5連による「きらめき」0.5往復も設定されました。
2005年、登場から10年を経過したのを契機に車両検査のタイミングでリニューアルが行われました。リニューアルと4次車(1000番台)増備による、5連の7連化については明日の記事で触れます。
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