世界で一番多い保有数を誇ったJALのBoeing747 その74 湾岸戦争後の航空不況でアメリカに留め置かれた JA8902
cn26344/ln929として製造、1992年7月23日にN6018Nのテストレジで初飛行、同年8月19日にJALに引き渡されたのがJA8902ですが、この機体も湾岸戦争後の航空不況の影響でWichitaに留め置かれることとなり、日本にフェリーされたのは1994年2月19日のことでした。
1年半のWichita駐機後、日本に同じ日にフェリーされたJA8901はJA8087~JA8089と同様に成田~ニューヨーク、ロンドン線専用機”Big Express"に指定されましたが、JA8902は指定されませんでした。MAGIC-II装備の3クラス機として活躍しました。
1996年9月13日、JL407便としてフランクフルトに向け成田空港から離陸しようと滑走を開始した直後、No.4エンジンがトラブルを起こし、離陸を中止、誘導路に入り停止しましたが、地上管制所からタイヤから火が出ているとの通報で、乗客330名、乗組員20名が脱出用スライドを用いて緊急脱出を行う事態となりました。脱出の際、乗客3名が重傷、19名が軽傷を負いました。
同機は12時57分に81番スポットをプッシュバックにて離れ、誘導路を進み、RWY16エンドに向かいました。13時10分36秒に管制所から離陸許可を得、離陸滑走を開始しました。出発前の離陸重量等を考慮した設定ではV1:151kt、VR:167kt、V2:180kt(V1:離陸決心速度、VR:引き上げ速度、V2:安全離陸速度)としていましたが、13時11分27秒、副操縦士がV1とコールし、機長が応答した直後、No.4エンジンのN1(ターボファンエンジンの低圧側シャフトの回転数の%、エンジン推力を示す)が79.8%まで低下、機長も異常を察知、13時11分30秒には他の3つのエンジンのN1も下がり始め、離陸中止を判断、管制官との交信でA-9誘導路へ向かう事となりました。
客室乗務員から操縦席にNo.4エンジンからの発煙、右主翼からの燃料漏れ、発煙の停止が伝えられ、副操縦士はブレーキの温度がやや高めであることを報告、FIRE ENGINEに関わるチェックリストを実施、地上管制官から747機のボディーギアからの出火が伝えられ、機長は脱出の指示をだしました。
機体の状態は
No.4エンジンのPS3(高圧圧縮機出口圧)取り出しバイプの取り付けナットが離脱、エンジン火災はなし
ブレーキ、メインギア16個のブレーキの熱遮蔽版のうち、10個が変色及び変形
タイヤ メインギア16個のタイや農地、10個のタイヤのヒューズが溶け、空気が抜けていた
右主翼からの燃料漏れはフランクフルトまでの長距離飛行のため、主翼内のタンクに燃料が満載されており、離陸中止の際の減速で燃料が前方に寄り、外気と連絡する通気用配管から燃料が漏れたもので異常ではなかった。
エンジンのN1低下の原因はPS3取り出しパイプの取り付けナットが外れていたことにより、ECU(Electronic Control Unit)エンジン制御コンピュータが燃焼用空気の減少を感知し、燃料の流量を減らしたため、エンジンの回転数が低下、出力の低下につながったものと判断されました。
1998/10/25 NRT
1998/10/25 NRT
2010年8月のJAL退役後は-446BCF フレイターに改修、2011年3月17日から2013年12月まではN459MCのレジでAtlas Airのフリートに、2016年3月14日からはN344KDのレジでWestern Global Airlinesのフリートで活躍中です。
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