2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その2 黎明期の蒸気自動車、ガソリン車
世界最初の自動車はフランスにおいて陸軍砲兵部隊の大砲の牽引のため、陸軍大臣エティエンヌ・フランソワ・ド・ショワズールが軍事技術者、ニコラ=ジョゼフ・キュニョーに命じ、それまでの馬に代わって蒸気機関を搭載した砲車として1769年、1770年に2台製作された三輪蒸気自動車、俗に言うキュノーの砲車(写真はこちら)と子供の頃、絵本で学んだ覚えがあります。
1号車は1/2サイズの試作、2号車が実物大で全長7mを超える大型運搬車でしたが、試走時に事故で破損、以降、ショワズールの失脚などで顧みられることもなく倉庫で30年間保管、ナポレオン時代の1801年に新設されたアカデミーの博物館(コンセルバトワール)に移設、保管展示され、その後はパリ工芸博物館 (Musée des Arts et Métiers)に移され現在に至っているようです。
車両仕様
全長: 7.25 m
全幅: 2.19 m (2.3 m)
ホイールベース: 3.08 m
駆動輪(前輪): 直径1.23 m 、幅0.19m 木製車輪に鉄タイヤ
後輪直径: 前輪よりも大径、鉄製
後輪間隔: 1.75m
車輌空重量: 2.8トン
積載時重量: 約8トン(車両+荷+乗員4名)
時速: 9.5km
ボディとフレーム: フレームや車輪はオーク材。車輪には周囲に鉄タイヤ。
エンジン部
ボイラー直径: 1.5 m
ボイラー高: 0.98 m
火室直径: 1 m
火室高: 0.30 m
エンジン: 自然圧を利用した蒸気エンジン直列2気筒
ボア: 325 mm
ストローク: 378 mm
ピストン高: 45mm
排気量: 67.72リッター(50L、47L、40Lとの記述もある)
燃料: 木(液体燃料との記述がされているものもある)
パワートレーン・トランスミッション:コネクティングロッド、チェーン、クランク、ラチェットでの伝達による前輪駆動。リバース(後退)も装備。
しかし、このクルマに関してはトヨタ博物館では触れられていなかったように思います。
それから117年後、ドイツにおいて小型軽量のガソリンエンジンを開発していたカール・ベンツが1886年に世に送り出したのがベンツパテントモトールヴァーゲン(Benz Patent Motorwagen )です。一見、エンジンを乗せた、三輪車のような自動車ですが、これが世界初のガソリン自動車と言われています。4輪ではなく3輪にしたのは操舵性の問題を解決するためだったそうです。エンジンは水冷式単気筒954㏄で最高出力0.55kW/0.75PS/400minでした。全長2700㎜、全幅1400㎜、全高1450㎜、重量265㎏で時速15km/hの走行が可能でした。
この頃の自動車はまだ動力源から駆動輪に至るメカは定まっていませんでしたが、エンジン-変速機-プロペラシャフト-ディファレンシャルギア-駆動輪といったその後のFR(Front-engine rear-wheel drive)のレイアウトを初めて世に出したのが1898年フランスのパナールエルヴァッソールが考案した6HPワゴネット(Panhard et Levassor 6HP Wagonette)でした。全長2950㎜、全幅1700㎜、全高1795㎜、総排気量1699㏄、水冷直列2気筒SVのエンジンを搭載し、最高出力4.5kW/6HP/minでした。
一方、アメリカではスタンレー社が1897年から蒸気自動車の製造を始め、1905年にはフロントにボイラーを置き、ボイラーで作った蒸気を床下のスライドバルブ式2気筒エンジンに送り、平歯車で直接、車軸を駆動するスタンレースティーマーモデルE2(Stanley Steamer Model E2)を世に出しました。全長3591㎜、全幅1605㎜、全高1606㎜、重量766㎏、ホイールベース2641㎜、最高出力7.4kW/10HP/minで1927年まで製造され、1905年、フロリダのオーモンドビーチにおいて127.66MPHの世界記録も樹立しました。静粛で振動が少なく、高速で走ることから大ヒット車となったようでした。
ヘンリー・フォードがガソリン車を開発したのが1896年、デトロイト・オートモビル社(後のキャデラック社)の主任設計者に就任したのが1899年、その後、重役陣と対立し、自ら社長を務める新自動車会社フォードモータースを設立したのが1903年、世界的ヒットとなったフォード・モデルT(日本ではT型フォード)が発売されたのが1908年ですから、まさにこの時代、欧米では自動車産業の黎明期でした。
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