2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その13 1950年代初頭、 トヨタの小型車部門への進出 トヨペット・SA型
トヨタ自動車工業が初めて製作した市販乗用車は1936年のAA型で直列6気筒エンジンはシボレーのコピー、シャーシ、ボディはクライスラーの「デソート・エアフロー」の模倣でした。3000㏄級のエンジンは当時の日本では大きすぎ、一方、ダットサンとして製作されていた750㏄クラスの小型車は小さすぎてゆとりがほとんどありませんでした。そこでトヨタはAA型よりもひと回り小さなクラスとして1939年に2.2リッター水冷直列4気筒OHVの「C型」エンジン搭載の中型試作車「AE型」(後の新日本号)を完成させましたが、時代は戦争に向かう時期で開発は頓挫してしまいました。
第二次世界大戦の終了後、進駐軍は日本の乗用車メーカーに乗用車の生産を許可しませんでしたが、トヨタでは1945年8月末に将来、乗用車の生産が解禁されることを見越して、開発計画がスタート、その頃、日本の街路を走っていたアメリカ車に比べれば小さいながら、欧州車風のハイメカニズムを導入し、当時の物資不足の中で生産が可能な試作車が1947年1月に完成しました。一方、乗用車生産に関しては自動車メーカーの運動の結果、1947年6月にはGHQが年間300台の生産許可が下りました。それを受けて、1947年8月、新開発のSA型乗用車、さらに同一のエンジンを用いた「SB型トラック」が同年10月、トヨタにとって初の小型自動車として発表されました。
トヨペットSA型
全長3800㎜、全幅1590㎜、全高1530㎜、ホイールベース2400㎜、水冷直列4気筒SV 995㏄エンジン 最高出力20kW/27HP/4000rpm
鋼板バックボーンフレームを採用しました。この方式は1900年代初頭にフランスのアメデ-・ボレー・ペールが考案したもので、チェコスロバキアのタトラ、ドイツのメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなどヨーロッパのメーカーが採用していました。4輪独立懸架方式も日本製乗用車では初めてでした。前輪はコイルスプリングによるダブルウイッシュボーン、後輪はリーフスプリングで吊られたスイングアクスルでした。
戦後の混乱期であり、性能の良い工作機械や資材が不足していた時代であったため、SA型の品質を一定に保つことが難しく、故障が多く、破損も頻発したこと、1000㏄S型エンジンが非力であったことから、最高速度が87km/hに留まったこと、まだ当時の日本は道路が整備されておらず、都市部でも未舗装の悪路が多く、複雑な4輪独立懸架機構は故障や破損が多発したこと、タクシー向けではなくオーナードライバー向けであったため、まだ販路が確立されていなかったこと等により。1947年から1952年までに215台が生産されるに留まり、ビジネスとしては失敗に終わりました。しかし、SA型を世に出したことは先進技術の試行、スタイリングの研鑽など、トヨタの自動車開発にはおおきな示唆を与え、後の発展の礎になったクルマでした。
ちなみに「トヨペット」という愛称はSA型乗用車、SB型トラックを売り出す際に公募で決まった「トヨタの愛車」を意味する言葉で、1949年には商標登録もされています。その後、「ダットサン」と並んで日本車の代表的車名として長く親しまれることになりました。
最後まで読んで戴きありがとうございます。
上のリンクをクリックされると面白い鉄道記事満載のブログ村。もしくは鉄道コムに飛ぶことができます。
« 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その12 1950年代初頭、スウェーデン・サーブ社初の市販乗用車 サーブ・92 | トップページ | 国内線の航空需要を満たすため導入されたANAのB747SR-81 14 JA8157 »
「旅行・地域」カテゴリの記事
「鉄道以外の博物館・展示施設」カテゴリの記事
- 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その17 大衆車の争い ダットサン・サニー vs トヨタ・カローラ(2025.04.22)
- 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その16 1955年代後半からの国民車構想で登場した軽自動車(2025.04.21)
- 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その15 1960年代 小型車BC戦争で初めて勝利した3代目コロナRT40型(2025.04.17)
- 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その14 1950年代 純国産方式で誕生したトヨペットクラウンRS型(2025.04.16)
- 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その13 1950年代初頭、 トヨタの小型車部門への進出 トヨペット・SA型(2025.04.03)
「自動車」カテゴリの記事
- 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その17 大衆車の争い ダットサン・サニー vs トヨタ・カローラ(2025.04.22)
- 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その16 1955年代後半からの国民車構想で登場した軽自動車(2025.04.21)
- 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その15 1960年代 小型車BC戦争で初めて勝利した3代目コロナRT40型(2025.04.17)
- 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その14 1950年代 純国産方式で誕生したトヨペットクラウンRS型(2025.04.16)
- 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その13 1950年代初頭、 トヨタの小型車部門への進出 トヨペット・SA型(2025.04.03)
« 2024年春の名古屋周辺旅行 トヨタ博物館を見学 その12 1950年代初頭、スウェーデン・サーブ社初の市販乗用車 サーブ・92 | トップページ | 国内線の航空需要を満たすため導入されたANAのB747SR-81 14 JA8157 »



コメント