2023年5月 9日 (火)

登場から35年が経過したJR九州の783系 その1 1988年3月の登場から1992年7月の787系登場まで

5月末から6月頭にかけて久しぶりに九州に旅行する計画を立てており、九州内の鉄道状況の予習も兼ね、JR九州の特急車両について触れてみることにしました。民営化後、電車特急では783系、787系、883系、885系がデビューしましたが、新幹線の開業でこれらの特急車両も、883系以外は第二の職場に移っており、783系は既に廃車も始まっています。

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2017/10/15 香椎 登場から29年が過ぎた783系のロゴ ハイパーサルーンは登場時から与えられたニックネームで783系が使用される特急は485系特急との差別化も込めて「スーパー有明」から「ハイパー有明」、「ハイパーかもめ」、「ハイパーにちりん」といった愛称になりました。

1987年4月1日の国鉄民営化で九州旅客鉄道(JR九州)は発足しました。当時、九州島内では高速道路網の整備が急ピッチで進められており、自家用車の保有率も上昇し、高速バス路線の発展も著しく、JR九州としては十分に競争力を有する特急車両が必要でした。JR九州が国鉄から継承した485系は南福岡電車区に223両、鹿児島運転所に100両配置されていましたが、車齢は20年程度でしたが、サービス水準が低く、速度向上も望めない状況であり、新しい設計思想を取り込んだ特急車両の開発が急務でした。

783-020404_20230508162601 2002/4/4 諫早 783系独特のサイドビュー 1次リニューアル後の姿

1988年3月13日の民営化後最初のダイヤ改正でのデビューを目指し、国鉄末期に開発された新技術を取り入れ、開発されたJR最初の特急車両が783系です。軽量ステンレス車体で、乗降扉とデッキを車体中央部に配置し、車両の客室を前後に分割、側窓のサイズを大型化し、客室からの前面展望を可能とするため、運転台と客室間の仕切り壁を低くし、客室の腰掛部分の床を200mm高くするなど従来の特急車両とは一線を画す設計としました。制御方式は国鉄末期の1983年、長崎本線・佐世保線に投入された713系で初めて実用化されたサイリスタ位相制御方式で、界磁制御は電機子回路とは並列の他励方式としました。この制御方式の特徴は交流電車では初の交流回生ブレーキが採用されたことで、713系は試作で終わりましたが、この技術は783系、811系、787系、阿武隈急行8100系などに活かされました。なお、交流機関車では1965年に日立製作所で製造されたED93 1号機、その量産タイプのED77形1966年三菱重工で製造されたED75 501号機において変圧器の二次側巻線を4分割し、従来の磁気増幅器をサイリスタとダイオードブリッジに交換し、タップ切換えと位相制御をサイリスタで行う方式を採用していましたが、界磁制御用回路もサイリスタ・ブリッジとし、交流回生ブレーキを可能としたのは713系が初めてした。

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1985/4/20 鳥栖 713系900番台 登場した頃の姿

主要諸元
最高運転速度 130 km/h
全長 21,050 mm (先頭車)20,000 mm (中間車)
全幅 2,950 mm
全高 3,670 mm
台車 軽量ボルスタレス台車 DT50Q、TR235Q (205系以来採用されている台車にヨーダンパを追加、若干の設計変更を加えたもの)
主電動機 MT61Q型直流整流子電動機(他励方式)(界磁と電機子は並列配置)
主電動機出力 150 kW × 4 / 両
駆動方式 中空軸平行カルダン撓み板継手方式
歯車比 3.95
制御方式 サイリスタ連続位相制御、交流回生ブレーキが可能
他励界磁による弱め界磁 (60%)
制御装置 RS400K型主制御整流装置
制動装置 電気指令式(回生・抑速ブレーキ付)
直通予備ブレーキ
応荷重装置
保安装置 ATS-SK、ATS-DK

客室を2分割することで、グリーン車と普通車、指定席と自由席、喫煙席と禁煙席など必要に応じ柔軟に設定することが可能となりました。分割された客室は下り方がA室、上り方がB室とされ、グリーン室の座席には横2列+1列の広幅リクライニングシートが採用され、シートピッチは1200mmでした。肘掛けにはマルチステレオを装備、座席背面には液晶テレビが設置され、1992年6月までは「ハイパーレディ」と呼ばれる女性客室乗務員が乗務していました。普通室は横4列のリクライニングシートでピッチは960mm、フットレスト付きで、1988年度製造の2次車からはマルチステレオが装備されました。空調は床下に装備されました。

運転席周りの機器配置は同時期に製造された211系に準じており、横軸式マスコンハンドル + 縦軸式ブレーキハンドル:常用7段 + 非常)が、マスコンハンドルはT字形となっています。電動車は1両にすべての機器を搭載した1M方式となっています。

783-020404

台車は205系の台車にヨーダンパーを追加し、若干の設計変更を加えた軽量ボルスタレス台車 DT50Q、TR235Qとしました。

登場時の前頭部は白く塗られ、赤い帯(後年登場した「かもめ」用編成はブルー帯)が前部まで回り込んでいるのが上り方先頭車のクモハ783、回り込んでいないのが下り方先頭車のクロ782とクロハ782でした。
 783系は1989年鉄道友の会第29回ローレル賞を受賞しています。

1988年3月13日のダイヤ改正に合わせ、同年2月から3月にかけ1次車29両、クモハ783-1~7、モハ783-1~4,101~107、クロ782-1,2、クロハ782-1~5、サハ783-1~4が製造され、南福岡電車区に配置されました。製造は日立製作所、近畿車輛が主に担当しましたが、このうち6両はJR九州小倉工場が艤装を担当しました。

ThscM1Mcの3両編成5本とTscMT(MT)M1Mcの5両(+増結2両)編成2本に組成され、前者は博多~熊本(一部、水前寺)間の有明12往復に、後者は博多~西鹿児島間の有明、スーパー有明、3往復に投入されました。当時非電化だった豊肥本線熊本~水前寺間はDE10が牽引・推進し、ヨ8000形(28000番台)が電源車として連結されました。豊肥本線内は普通列車扱いでした。

1989年3月11日のダイヤ改正では1988年12月から1989年2月にかけ2次車28両、クモハ783-8~10、モハ783-5~11、108~110、クロ782-3~5、サハ783-5、101~106、201~205が増備されました。増備車も含めた783系は
ThscTM1Mc 5本は有明13往復に、TscMT2(MT1)M1Mc 4本は有明3、スーパー有明1往復に、Tsc(M)T1MT2MT1M1Mc 1本はかもめ2往復に投入されました。

1990年3月10日のダイヤ改正に向け、1989年12月には3次車27両、クモハ783-11~14、モハ783-12~18、111~114、クロ782-6~8、クロハ782-6、サハ783-6、107~110、206~208が増備され、増備車も含めた783系は
ThscTM1Mc 6本はハイパー有明11往復、ハイパーにちりん3往復
TscMT2(MT1)M1Mc 6本はハイパー有明7往復
Tsc(M)T1MT2MT1M1Mc 2本はハイパーかもめ5往復に投入されました。

この改正から783系列車の130km/h運転が開始されました。

1991年3月16日のダイヤ改正に向けて、1990年12月と1991年2月に、4次車6両、クモハ783-15、モハ783-19,115、クロハ782-7、サハ783-7,111が増備され、増備車も含めた783系は
ThscTM1Mc 7本はハイパー有明11往復、ハイパーにちりん5往復
TscMT2(MT1)M1Mc 6本はハイパー有明7往復
Tsc(M)T1MT2MT1M1Mc 2本はハイパーかもめ5往復に投入されました。

尚、この時点でMT各1両が予備車として編成組成されない状態となり、783系の新製は終了しました。

クモハ783 1~15
モハ783 1~19(M)、101~115(M1) 0番台はパンタを前位に装備、100番台は準備工事とし、100番台はクモハ783とペア
クロ782 1~8(T'sc) 「かもめ」と西鹿児島発着の「有明」に連結された下り方先頭車
クロハ782 1~7(T'hsc) 熊本、水前寺発着の「有明」に連結されていた下り方先頭車
サハ783 1~7(T0)、101~111(T1)、201~208(T2) 
0番台は当初、西鹿児島駅を発着する「有明」に連結されていましたが、1年足らずで熊本駅または水前寺駅を発着する「有明」のみへの連結に変更されました。100番台は「かもめ」と、西鹿児島駅を発着する「有明」編成用の増結用として製造されました。200番台は1989年に、「有明」(西鹿児島発着分のみ)「かもめ」編成用の増結用として製造さました。   

以上90両が783系の新造両数でした。

運転線区は鹿児島本線から長崎本線、日豊本線まで拡大しますが、1992年7月15日のダイヤ改正で787系が登場、九州鉄道ルネッサンスとして1975年3月の新幹線博多開業で消滅していた特急「つばめ」の名称が復活し、787系が783系に代わり、JR九州の電車特急のフラッグシップを担うようになります。

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2016年4月11日 (月)

東京総合車両センター公開 その3 首都圏直流電車の主電動機 part7 MT61B MT61C

2015年8月22日の東京総合車両センター公開での直流電車の主電動機展示に沿ったこのシリーズ、今回は MT61B形及びMT61C形 主電動機です。

Mt61b_61c_1508222015/8/22 東京総合車両センター

MT61形主電動機は本来、近郊形713系向けに開発された直流直巻整流子電動機で端子電圧500V、1時間定格出力150kWでした。サイリスタ位相制御により、他励界磁を導入し、国鉄交流電車として初めて交流回生ブレーキが採用されました。

 

713_850420_21985/4/20 鳥栖
713系900番台 登場した頃の姿

1984年2月1日のダイヤ改正で長崎本線の機関車牽引列車を電車化するために581・583系改造の近郊形電車715系の改造分を補足するために試作編成900番台4編成8両が東急車輌製造と日立製作所で製造され、南福岡電車区に投入されました。しかし、国鉄の財政悪化で余剰となった急行形電車の車体載せ換えおよび近郊形改造による必要数投入に方針転換されたため、試作編成からの量産はなされませんでした。ただ、技術開発の成果は以後に登場した783系、811系、787系、阿武隈急行8100系などに活かされました。

一方で、”省エネ電車”201系を世に送り出したものの、電機子チョッパ方式では製造コストがかかりすぎるため、国鉄は首都圏山手線の103系111,113系、115系置き換え用車両に大幅なコストダウンが図れ、従来の直流直巻式電動機が使用可能な「界磁添加励磁制御」方式を採用した車両の開発が行われていました。

 

103_205_8503231985/3/23 代々木
103系と顔を揃えた投入直後の205系

1985年3月のダイヤ改正で横浜線・武蔵野線の輸送力増強を行うことになり、山手線の103系を捻出するための車両が必要となりました。既存の201系を増備するか、新規の形式を立ち上げるかの議論の結果、1984年6月末に次期近郊形システム(界磁添加励磁制御方式:東洋電機製造)の通勤形車両の製造が決まり、1985年1月末に第一編成が落成、デビューまで僅か7ヶ月という短期間の設計・製造となりました。

界磁添加励磁制御は抵抗制御の延長上にあるシステムで、

・力行時は電動機を流れる主回路電流はバイパスダイオードを介して抵抗器に流れることで抵抗制御および直並列制御で加速が行われる。

・誘導分路にある界磁接触器がオンとなり、誘導コイルを接続し、外部三相交流を電源とする添加励磁制御による位相制御で整流・制御された直流電圧による電流で、誘導分路に流れる主回路電流とは逆向きの電流を流して、電動機の弱め界磁制御を行う。

・減速時は誘導分路にある界磁接触器がオンとなり、添加励磁制御で整流・制御された直流電圧による逆向きの電流が誘導分路と電動機の界磁を介して流れ、それにより電動機の電機子での逆起電力の大きさを変えて回生ブレーキを行う。

三相交流電源が必要であるものの、位相制御用の半導体素子は小容量で済み、直巻電動機が使えるといった利点がある一方で、起動時に進段や回路切り替えによる前後衝動がある、回生制動の低速域での効用範囲が狭い(20km/h程度で失効)、直流電動機使用のためブラシのメンテナンス等の問題がありました。

ちょうど国鉄からJRに移行する時代に多くの車両に採用され

国鉄 205系 211系 213系

JR東日本 205系 211系 215系 251系 253系 651系
JR東海 補助電源を直流としている点が特徴 DC-DCコンバータ
211系(6000番台はC-MT64A) 213系 311系 371系
JR西日本 205系 211系 213系 221系(2M方式)

東武鉄道 200系

帝都高速度交通営団 5000系 1989年製造分

東葉高速鉄道 1000形 1995年営団5000系を改造

長野電鉄 2100系 (JR東253系)

富士急行 6000系 (JR東 205系) 8500系 (JR東海 371系)

名古屋鉄道 100系 1800系 5300系 5700系 6800系

京阪電気鉄道 2200系 2400系 1000系 5000系

山陽電気鉄道 5000系

などの採用例があります。

205系の場合、主電動機は713系用に開発されたMT61形を端子電圧375V、定格回転数1530rpm、定格出力120kW 弱界磁率最大35%、最高回転数4600rpmとして使用しています。

制御装置はCS57形となりました。電動カム軸式でノッチ戻し機構も搭載されており、力行時の抵抗制御段数は直列13段・並列11段です。1器の主制御器が8台の主電動機を制御する1C8M方式です。
MT61A, B, C1, C2は冷却ファンが外扇方式か内扇方式かによる区別のようで、AとC1が外扇方式だそうです。京葉線生え抜きの205系は内扇式モーター搭載で投入されていますが、検査時に外扇式と交換されることもありました。

界磁添加励磁制御方式ではありませんが、MT61系主電動機搭載の車両は
JR北海道 721系 JR九州 811系
などもあります。

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