1974,1975 北海道へ 4 我が国初の交流電車711系 その1
今回は北海道シリーズでこれまでにも何回か登場してきている711系について触れます。
1974/7 深川駅で乗り換えの際に初めて遭遇した711系
国鉄が1967年に設計・開発した、日本初の量産交流近郊形電車で、函館本線の電化事業と並行して、徹底した耐寒耐雪機能を考慮して開発された北海道内初の国鉄電車です。本系列は在来線営業車初の交流専用で設計され、かつ1M方式を採用した量産車となりました。
1967年に試作車2編成4両が完成し、各種試験が行われました。量産車は1968年から製作され、同年8月28日の小樽 - 滝川電化開業時に営業運転を開始しました。1969年の旭川電化、1980年の千歳線 - 室蘭本線室蘭 - 沼ノ端電化と道内の電化区間が延長される度に増備されました。
711系試作S-902 編成 まだ2連で活躍していた頃 1975/8/9 岩見沢
同じくS-902編成が貨車に挟まれ回送されるシーン 1975/10/5 札幌
汎用的に使用できる車内設備を有し、普通列車のみならず「かむい」「さちかぜ」の急行列車にも使用されました。
1987年の国鉄分割民営化では全車が北海道旅客鉄道(JR北海道)に承継されましたが、後継の721系 - 731系の製作により、1990年代後半からは淘汰が進んでいまする。なお、2014年度末をもって営業運転を終了させる方針であることが2012年11月に報道されました。
<車体>
構体は普通鋼製で、1,000mm幅の片開き引戸を車体両端の片面2か所に配しました。客室と出入口を扉で仕切ったデッキを備え、455系などの急行形電車に類似する構造です。客室窓は1,080mm × 680mmの1段上昇式で、内外2組の窓枠をもつ二重窓とし、内側の窓枠をFRP製とするなど、冬季の車内保温を重視した構造をもっています。
電動車のモハ711形には、大容量の「雪切り室」が客室内2位、3位側の2か所に設置されており、吸気口も車体側面の高い位置にあります。これは主電動機冷却のための外気を一度室内に導いたうえで雪を分離し、機器類への雪の侵入を防ぐためのものです。雪切り室と主電動機の間は床下の風洞と蛇腹でつながれています。
特急用として北海道に導入された485系1500番台が北海道の雪による故障続発で撤退したのに対し、北海道用に設計された711系などは冷却空気系に負圧を生じない設計を貫き、北海道特有の細かい粉雪の進入を防いだことで安定運用となりました。
電動機冷却用の風洞は床下の空間に設けられ、断熱材を収容する必要もあるため、床面は暖地向け車両に対して50mm(レール面基準)高い位置にあります。床面高は電動機を持たない制御車クハ711形も同一寸法とされ、このため前面の運転台窓・貫通扉・種別表示器は本州向け電車より高い位置となっており、屋根から前頭部へかけての傾斜もありません。
前照灯はシールドビームを正面中位の左右に各1灯、標識灯・タイフォンは正面下位に設ける。灯火類は国鉄電車の規定位置にあるため、相対的な取付位置は低く見え、標準的な「東海形」の前面とは印象が異なります。前部の排障器(スカート)はエゾシカやヒグマなどの大型動物や、氷塊との衝突を考慮し、耐衝撃性を向上した大型のもので、板厚も厚くなっています。
車両間の貫通幌は車体側と幌枠側の両方に固定用クランプを持つ独特の仕様で、国鉄新性能電車では唯一のものです。
外部塗色は車体全体を赤2号(えんじ色)、先頭車の前面下部をクリーム4号とした配色でしたが、1985年から塗色変更が実施され、明るめの赤1号の地色に、前面と側面窓下にクリーム1号の帯を配したものに変更されました。室内の化粧板も暖地向け近郊形のような淡緑ではなく、新幹線0系や特急・急行用車両などと同じ薄茶色4号です。
1975/8の札幌駅でのS54編成 電車もですが、駅の構造も大きくかわっていることが分かります。
<制御系>
日本の電車では初めてサイリスタ位相制御を採用しました。着雪による故障の起こりやすい接点(スイッチ)類を極力排除し、冬季のトラブル回避とシステムの小型化を図りました。主電動機は永久並列の構成で、電圧制御のみを行い弱界磁制御は用いていません。
勾配区間での走行がなく、また力行時に起動抵抗器を使用しないため、さらに多くの抵抗器を必要とする発電ブレーキは装備しません。常用ブレーキは電磁直通空気ブレーキのみを装備しました。
機器構成の簡略化で軽量化が図られ、電動車は1両で主回路を構成する1M方式が採用されました。
量産車ではモハ711形1両の両端に制御車であるクハ711形を組成し、1M2Tの3両編成を基本構成としました。これはサイリスタ位相制御の採用で高い粘着性能が得られたことと、主電動機MT54の端子印加電圧を高くしたことにより、定格出力が標準の120kW → 150kWで弱界磁制御を排して単純化し、定格速度が同一歯車比の抵抗制御車の52.5km/h → 73.0km/hへとそれぞれ向上したことで可能となったもので、コストを抑えつつ、輸送力を確保することに貢献しています。反面、3両編成中に電動車が1両のみでMT比が低く、公称の起動加速度値1.1km/h/sは一般の特急形電車をも下回りました。
まだ塗装は登場時の塗装ですが、前照灯は4灯になった1983年夏の姿 1983/8/23 札幌
札幌駅で781系特急「ライラック」と並ぶ
<台車>
台車は本系列専用のDT38形・TR208形で、それぞれDT32形・TR69形をベースとし、インダイレクトマウント式空気バネの枕バネと円筒案内式の軸箱支持装置、密閉形円錐コロ軸受をもつ。軸バネはゴムで被覆され、凍結による減衰機能喪失を防止します。基礎ブレーキ装置はDT38形が両抱き式踏面ブレーキ、TR208形がベンチレーテッドディスクブレーキです。軸受け、軸箱支持共に、国鉄量産形電車では初採用の方式です。
主電動機は直流直巻電動機のMT54A形(第2次量産車まで)・MT54E形(第3次量産車)を用いています。これは国鉄新性能電車が広汎に使用する電動機MT54形(120kW、印加電圧375V)を基に、印加電圧を500Vに上げ、電圧比例的に出力150kWの交流電車用定格としたものです。冷却は独立した送風機を使用する他力通風方式で、車体の「雪切り室」と床下風道の循環気流を併用する方式として、氷雪の進入を防いでいます。この副次作用で、他形式に比べ、同じ主電動機を装備しながら、冷却ファンの音がしないことも特徴となっています。
動力伝達は中空軸平行カルダン駆動方式で、歯車比は近郊形標準の4.82に設定されました。
次回は試作、量産車、そして改造について触れます。
以上、Wikipediaの記事を参考にしました。
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