1989年のDüsseldorf Airport その34 Lufthansa A310
冷戦時代の西ドイツDüsseldorf空港で撮影した旅客機のシリーズ、今回はLufthansaのAirbus A310です。
D-AICS Airbus A310-203 cn 400 1989/5/3 Dus
サッカー女子ワールドカップカナダ大会、世界ランク1位のドイツチームは準決勝でアメリカと対戦し、惜しくも0-2で敗れ、昨年の男子ワールドカップに続いて男女ともの世界チャンピオン獲得はなりませんでしたが、ドイツのサッカーのレベルの高さは世界に知らしめていますね。
さて、ドイツのフラッグキャリアであるルフトハンザ航空に関してはこれまで、ベルリンテーゲル空港のBoeing 707-458 D-ABOC, Düsseldorf空港のオブザベーションデッキのJu52、DC-10-30、Boeing 727, Boeing737-230, -330、シカゴ空港でのB747-8の話題などで触れてきましたが、エアバス機の話題は初めてとなります。この後のフランクフルト空港ではA340, A320などが登場しますが、ここではA310について触れようと思います。また、A310の開発ストーリーに関してはベルリンテーゲル空港でのパンナム機の話題で触れました。
Airbus A310はA300の胴体を10フレーム分短縮し、座席数を200席程度とした機体でサイズ的にも航続距離的にもBoeing 767と競合する機体です。当初はA300B10と呼ばれ、後に正式名称がA310に決まりました。
この写真のA310-200はルフトハンザとスイス航空がローンチカスタマーとなったタイプで1978年7月7日にルフトハンザが50機、スイス航空が20機発注して製造が開始されました。A310は最初から二名乗務を前提に製造されており、操縦士の作業負担を軽減するために機体のシステムが自動化され、従来の機械式計器に代えて6基のCRTディスプレイに計器情報を統合的に提示するコックピットが開発されました。
表1 LufthansaのA310-200 Fleet List すべて-203 (エンジンGE CF6-80A3)というタイプで13機導入
エンジンはGEのCF6シリーズとPWのJT9Dシリーズ、RRのRB211シリーズから選ぶことが可能とされましたが、LHはCF6、SRはJT9Dを選択し、RRのエンジンを搭載したタイプは結局製造されませんでした。
A310の航続距離延伸形としてA310-300が開発され、スイス航空がローンチカスタマーとなり、1983年3月29日に開発がアナウンスされました。-300は水平安定板内にも燃料タンクを設け、尾翼と主翼の燃料を移送することで機体の重心位置を制御するシステムが導入されました。この技術は最初はコンコルドで開発されたものでしたが、実際に水平尾翼に燃料タンクを設けたのはA310-300が最初でした。さらに燃料搭載量を増やすオプションとしてLD-3貨物コンテナ2個分のサイズの補助中央タンクも用意されました。
表2 LufthansaのA310-300 Fleet List すべて-304 (エンジン GE CF6-80C2A2)というタイプで12機導入
これらのデータはAirfleets.net から
A310-300では複合素材の適用範囲が拡大し、垂直安定板の1次構造部材にもCFRPが用いられ、軽量化が図られました。-300では主翼の翼端渦を抑えるため翼端にウイングチップ・フェンスが付け加えられ、これが-200との区別にもなっていましたが、後に-200でも追加となりました。エンジンはGE, PW, RRの3種の選択肢がありましたが、-200と同様RRのエンジン装備機は製造されませんでした。初飛行は1985年7月8日で、12月にスイス航空に引き渡され、就航しました。この頃、双発機の洋上長距離飛行の条件を定めるETOPSルールも策定され、A310-300タイプは大西洋横断路線、アジア~ヨーロッパ路線、シンガポール~モーリシャス路線などにも投入されました。
D-AICS
こういった流れから1980年代後半から1990年代初頭にかけてA310の販売実績は好調に推移しましたが、最大のオペレータだったパンナムの倒産、ルフトハンザも運航数を減らし始め、旅客機から貨物機へとのシフトが始まりました。1998年4月6日に255号機が初飛行したのを最後に製造は無くなり、2006年3月にエアバス社はA300-600とともに総生産機数255機で生産の終了を発表しました。Boeing 767に較べると総生産機数は半分にも満たない状況ですが、A310の技術はA300-600の開発に生かされ、以降のエアバス機にも引き継がれました。
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