筑豊本線、若松線、若松~折尾間を語る上で忘れてはいけないのが、非電化区間と交流区間両用に投入されたBEC819系電車です。”Dual Energy Charge Train"からDENCHAという愛称が与えられました。
2017/10/14 筑前垣生 BEC819系Z1編成
2014年11月に投入が発表され、2016年4月に1編成2両が日立製作所で落成、試運転などの後、同年10月19日にと筑豊本線、直方~若松間での営業運転に投入されました。2017年2月には2日に分けて量産車3編ずつが下松から甲種回送され、3月4日からの新ダイヤで若松線を走る全列車がBEC819系に置き換えられました。さらに直方~桂川~篠栗線~博多間でも運用が開始され、817系との連結運用も存在します。
2017/10/14 折尾
車体はアルミ合金製で817系をベースに305系で採用されたスマートドア(押しボタン式半自動ドア)やマルチサポートビジョン(大型液晶ディスプレイ)も導入しました。最高速度は120km/hです。
←若松
クモハBEC819 クハBEC818
VVVF SIV CP Bt
パンタ WC
制御方式は回生ブレーキ付き、PWMコンバータとVVVFインバータ搭載のVVVFインバータ方式で架線の交流20kV60Hzと主変圧器で降圧、PWMコンバータで直流1600Vに変換後、VVVFインバータで三相交流に変換して誘導電動機を駆動します。コンバータとインバータの間に主回路用蓄電池と補助電源装置が繋がり、直流電力がそれぞれ蓄電と補助電源発生に使われます。
主電動機は内部を外気から遮断した全閉形外扇方式の三相かご型誘導電動機MT404K (95kW/4個)が搭載されています。出力は817系に較べて低めに抑えてあります。
2017/10/14 Z003編成 折尾
主回路用電池はクハBEC819形にマンガン酸リチウムイオン二次電池CH75-6を72個直列に搭載したモヂュールを3個並列(3バンク構成)に搭載しています。定格電圧は1600V(最大1814V)、定格容量383.6kWです。それぞれのバンクに異常が発生した際は入力部の電磁接触器が開放され、運転が継続できるようになっています。
BEC819系の誕生にはJR九州と鉄道総研による817系を用いた蓄電池電車試作車の歴史がありました。
直方車両センター配置のV114編成に公称値1382V~83kWのリチウムイオン電池を搭載し、2013年に筑豊本線中間~桂川、日田彦山線城野~石原間で走行試験が実施されました。走行試験終了後は当該編成は元の状態に復帰しました。
2017/10/14 直方
817系での試験の経験を踏まえて、蓄電池の定格電圧、定格容量ともにアップされました。
架線走行モードでは屋根上の交流遮断機(VCB)が入りの状態で、蓄電池走行モードは同遮断機が切りの状態ですが、主回路用蓄電池は主回路に接続されています。減速時には回生ブレーキから発生した電力を主回路充電池に充電します。電化された駅に停車中、10分で90km区間走行用の電力を急速充電することも可能です。
SIVは出力80kVAで電化区間ではPWMコンバータからDC1600Vの電力を、非電化区間では主回路用電池からDC1600Vの電力を三相交流440Vに変換しています。
CPは吐出量約700l/minのオイルフリーコンプレッサが採用されています。
パンタは折り畳み高さを3980mmに抑えたシングルアーム式で非電化区間に存在する狭小断面トンネルに対応し、上部のスリ板を4枚にして急速充電中の大電流にも耐えられるようになっています。
台車は空気バネ式ブルスタレス台車のDT409K,TR409Kです。
2017/10/14 折尾 Z003編成 運転台
マスコンは左手操作のワンハンドル式、正面に12.1インチのワイド乗務員支援モニタが装備されており、車両の状態、サービス機器の状態、主回路蓄電池の温度、電圧などの監視が可能になっています。
非電化区間に誤ってパンタグラフを下げずに進入しないようにパンタグラフインタロッックシステムが装備されています。地上側にIDタグ(パンタ下げ)があり、切換点が近づくとモニターに注意喚起の知らせが表示され、力行禁止の指令が働き車両は停止します。パンタ下げの動作でこれらは解除されますが、万が一突入すると非常制動、強制パンタ下げが行われます。
車内は305系や後で登場予定の817系2000、3000番台と同様の造りとなっています。
車端部の機器室と壁面にはマルチサポートビジョンによる情報表示がなされます。
2017年6月から7月にかけての秋田旅行で観察したEV-E801系はこの電車のシステムをベースに耐寒耐雪対応にしたものです。
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