2019年5月11日 (土)

横浜市電保存館を訪問 その9 吉村コレクション part1 蒸機編

2015年4月1日横浜市電保存館訪問、昨日までの記事で紹介した7両以外に57歳という若さで亡くなられた横浜市港北区仲手原に在住された鉄道模型コレクター吉村栄氏が40年かけて製作、収集された鉄道模型(Oゲージ)のコレクション、「吉村コレクション」があります。

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1983年に横浜市に寄贈され市電保存館で保存されているのは国鉄の機関車、電車、全国各地の私鉄車両で全て紙製手作りのOゲージとのことです。
今回の記事からは蒸機、電機、ディーゼル機関車の写真をいくつか紹介したく思います。

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2014/5/24 9856 鉄道博物館

9750形
日本で初めて本格的に導入された大型マレー式機関車です。

東海道本線国府津~沼津間(山廻り、現在の御殿場線区間)や東北本線の黒磯~白河間の幹線勾配区間の輸送力不足を打開するため、1911年にアメリカのアメリカン・ロコモティブ社製9020形(当初は4600形)が6両導入されました(機関車本体のみで炭水車は国内工場で製造)。
試運転に供されましたが前部台車の蛇行動が激しく、走行安定性に欠け、動輪の摩耗が大きいことが判明し、当時既に旧式だった飽和式の9020形に代わって加熱式で大量導入されたのが9750、9800、9850形3形式で、アメリカン・ロコモティブ社製が24両(9750-9773)、アメリカ、ボールドウィン社製が18両(9800-9817)、ドイツ、ヘンシェル・ウント・ゾーン社製が12両(9850-9861)です。これら54両は山北~沼津間、大津~京都間、黒磯~白河間、長野~直江津間、亀山~加茂間での貨物列車の牽引と急行列車の補機として使用され、1933年までに全廃となりました。9856が万世橋の交通博物館に保存され、2007年からは大宮 の鉄道博物館に展示されています。その後は勾配線区用にD50形が投入されることになり、我が国のマレー式蒸気機関車は4形式のみとなりました。

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C55形流線形(20-40)
C55形は1935年から1937年にかけて62両が製造されましたが、1936年に製造された2次形20-40の21両(20汽車製造、21-33川崎車輌、34-40日立製作所)はC53 43で試験された流線形デザインが本格導入され、新造されました。C53 43では大型の除煙板はありませんでしたが、C55流線形では小型除煙板に加え、写真のようにサイドスカートから連続する大型の除煙板が設置されました。21両の流線形機は四国を除く全国各地に分散配置され急行列車牽引に活躍し、特に名古屋機関区配置の24-26は臨時特急「」を牽引しました。しかし、流線形機は殆ど効果がないことが判明し、さらにケーシングがあることが現場からも嫌われ、戦後の1950年から1951年にかけて1次車と同様の外観になるよう再整備されました。

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D62形
20両のD52形1950年から1951年にかけて浜松工場で2軸従台車に改造し、線路等級の低い線区への入線を可能にした形式です。

単に従台車を交換したに留まらず、D52形は戦時設計で代用品が使用されていたものが多かったため、それを改善する目的でボイラーの整備、炭水車や除煙板の代用設計品の制式品への交換、給水温め器の移設、自動給炭機の設置などが行われました。なお、1D2バークシャーの軸配置としては日本初でした。
当初、稲沢機関区、米原機関区に10両ずつ配置され、東海道・山陽本線での貨物列車牽引に使用されました。逢坂山トンネル通過対策として集煙装置も装備されました。1958年の姫路電化で一旦全車休車となり、転用先が検討され、東北本線長町~盛岡間と決まってから、軸重軽減改造がなされ、総重量を減らさずに動輪と先・従輪を結ぶ釣合梁の支点の位置を変更し、最大軸重を16.22tから15.00tに軽減しました。改造工事終了後、1959年末に一関機関区に全機集結、ボイラー未交換車似状態不良が発生し、休車になる車両が出たものの盛岡電化まで使用され、1966年10月19日に全車廃車となりました。

廃車後、全機解体されており、保存機は全く無く、吉村コレクションのD62はそういった意味でも貴重な模型となっています。

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2015年2月24日 (火)

40年ぶりの梅小路蒸気機関車館 7 D50 140号機

先日、梅小路機関車館が京都鉄道博物館開館準備のため、この夏に閉館するというニュースがありました。

こちらは昨年夏、2014年8月10日、台風の接近する猛烈な雨の日でしたが、40年ぶりに訪問した同館の様子をリポートしており、今回はD50 140号機です。

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D50形式は第一次世界大戦の国内の貨物需要の増大に対処するため、特に東海道本線、箱根越えなどにおける輸送単位増大を図るため1916年頃から、9600形式の後継機として、計画された貨物用テンダー機関車でした。

当初は軸配置1E(デカボット)方式も検討されましたが、18900形(後のC51形式)の成功もあって、ミカド方式の従台車付き1D1方式とし、形式名は9900形となりました。鉄道省の小河原藤吉技師を主任設計者として、鉄道省とメーカー各社により共同設計されました。

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川崎造船所が主体となり、汽車製造、日本車輌製造、日立製作所により、1923年から1931年の間に380両が製造されました(1928年10月に称号改正でD50形式に)。しかし折からの昭和恐慌による貨物輸送量の減少により、強力な貨物用機関車の需要が小さくなったため、製造が打ち切られ、以後の増備は改良型のD51形へ移行しました。

ボイラーは3缶構成の広火室加熱式ストレートボイラーで煙管長は18900形の設計を踏襲し、5,500mmとされ、火格子面積は従台車の採用で9600形の1.4倍の3.25平方メートルに拡大し、使用蒸気圧は12.7気圧、給水暖め器を初めて装備し、熱効率の向上を図りました。自動空気ブレーキ採用に伴い,圧縮空気が利用できるようになったため、動力式焚戸口が採用されました。

D50_140_140810_12 140号機は潅水清浄装置が装備されています。

1927年製造の19992号機からは輸入蒸機8200形(後のC52形 アルコ社製)の設計を参考に火室にアーチ管が追加され、煙管の伝熱面積の縮小、加熱面積が拡大され燃焼効率が改善されています。

先台車は1軸心向(リンク)式、従台車は18900形のものに改良を加えたコール式が採用され、動輪径は1,400mmとなりました。当初は機関車本体と炭水車の連結方式や先台車の案内方式に問題があり、分岐器通過の際に脱線事故や第一動輪のフランジ摩耗が頻発したそうですが、後年解決されました。

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この前デッキの長さが検修する側にとっては好都合だったようですが、一方で脱線事故の頻発という欠陥でもありました。

9600形で600tから700tの牽引が限度であったものを一気に950tまで可能にする性能を発揮したため、現場からは好評を博し、量産が進められました。

初期車は登場後、東海道本線山北~沼津間、常磐線田端~水戸間などで使用され、東海道線の特急補機仕業では90km/h以上を出したといわれています。北陸本線、中央本線、信越線など急勾配区間の多い路線ではD51形の製造開始後も動軸重が僅かに重く、空転が発生しにくい同形式が信頼され続けたそうです。
前部のオーバーハングが長かったため、曲線通過性能に難があり、退行運転や推進運転で軽量な2軸貨車などを脱線させることもしばしばあったそうです。
廃車が出始めたのが1955年からで、1965年頃にはほとんどが廃車となり、また2軸従台車に改造されD60となった機関車も現れました。最後まで残ったのは、筑豊本線の石炭列車と大船渡線の貨物列車で、直方機関区の140号機が梅小路に動態保存となりました。

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D50の性能諸元が幹線の貨物牽引定数決定の礎となっており、そこから駅の有効長や鉄道ヤードの規格が決まっており、D50は日本の鉄道の基準を作った機関車といっても過言ではないとのことです。

D51形の大量製造で両数に余剰が生じ、丙線規格区間向けに1951年から1956年にかけて78両が従台車を2軸方式のLT254に振り替えたD60形式が誕生しました。なお、D60形式はシリンダ内径も550mmに縮小し、ボイラの煙管構成も全面的に変更しているそうです。

D50_140_740929             40年前の姿 1974/9/29

なお、保存機はこの140号機と、北海道北見市に保存されている25号機しかありません。D60の保存機は1,27,46,61の4両が山口県、福岡県に保存されています。

最後に沖田祐作氏の機関車表より、140号機の履歴を載せます。

D50140     日立製作所笠戸工場=199          1926-03-20 S78.14t1D1T(1067)
   車歴;1926-03-20 製造→ 納入;国鉄;19939→ 配属[達310];神戸局→1926-03-20 使用開始→
      1926-03-28 配属;梅小路→10927-12-11 糸崎→1928-03-12 岡山→
      1928-05-30 借入;吹田→1928-08-19 返却→1928-10-01 改番[達380];D50140→
      1928-11-25 姫路→1930-10-01 梅小路→1931-12-21 吹田→
      1941-04-12(4/13 着)大里→1941-05-27 借入;鳥栖→1941-06-11 返却→
      1942-10-30(10/31 着)直方→1948-05-05 現在;直方→1952-11-19 借入;出水→
      1953-05-03 発(5/4 着)返却→1955-08-01 現在;直方→1964-04-01 現在;直方→
      1968-10-06 若松→1971-04-30 一休指定→1971-12-31 指定解除→
      1971-12-15 発(12/17 着11/17?)梅小路→1972-01-01 書類上の転属日→
      1972-05-16 借入;直方→1972-09-20(書類上返却日)9/26 発10/1 着返却→
      1979-03-28 廃車;梅小路→ 保存;京都府JR 西日本「梅小路機関車館」;D50140
      (距離=2,440,196㎞)

1926年製造ですから、来年満90年になります。新製配置は梅小路で関西、岡山付近で活躍した後、1941年から九州に渡り、1971年まで筑豊で活躍しています。

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